原発周辺市町村の住民らでつくる「県原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」の渡辺明議長に安全確保の在り方を聞いた。
―県民の安全、安心は確保されているか。
「1~4号機原子炉建屋からは毎時数十万~数百万ベクレルの放射性物質が放出されている。東電は原子力規制委員会の目標値(毎時千万ベクレル)を下回っているから安全だと説明するかもしれないが、安心の基準は人それぞれ違う。事故前は放射性物質が放出されていなかったのだから安心感を得られているとは言い難い」
―1月には敷地境界の放射性物質の濃度上昇が検知され警報が出たが、東電から市町村などへの通報は約2時間遅れた。
「通報遅れの背景には、この程度は安全だという慣れがあるのではないか。その認識から安全対策は崩れる。東電は放射性物質を一切外に出さないという原則を守らなければならない」
―東電や政府、原子力規制委員会に求めることは。
「原発事故は原発の専門家に任せてきた安全神話の中で起きた。だからこそ廃炉関係者は専門家ではない県民の不安の声を真剣に受け止め、できる限りの対策を講じるべきだ」
わたなべ・あきら 栃木県出身。東京都立大大学院修士課程修了。福島大名誉教授で同大理事・副学長などを歴任。専門は気象学。67歳。