作曲家古関裕而がモデルの朝ドラ「エール」の風俗考証を担当している日大商学部准教授の刑部(おさかべ)芳則さん(43)は10日、福島市のとうほう・みんなの文化センターで講演した。古関メロディーを"大衆の応援歌"と評し「みんなが歌えるため、健康的で戦前・戦中・戦後と人々を慰め、励まし、楽しませた。世代を超えて受け継がれていってほしい」と語った。
福島市、福島民友新聞社の主催。刑部さんは日本近代史が専門だが、昭和歌謡史に精通している。朝ドラでは風俗考証として台本を確認し、制作陣に時代に合った街の風景や店の様子、服装などを助言したり、撮影現場の疑問に答える業務を担っている。講演では「古関裕而からの応援歌」を演題に、古関の足跡や作品、魅力などを紹介した。
古関が「戦時歌謡」で活躍したことに、刑部さんは「哀愁と勇壮が込められたメロディーが戦時中の人々の心の支えになった。戦後に復興の作曲依頼があり、戦後も長く人々に愛された」と解説した。古関は戦後も大ヒットを連発したが、「戦時歌謡への複雑な思いを終生抱きながら作曲活動に励んだ。集大成は戦後復興の証しである東京五輪の『オリンピック・マーチ』だった」とまとめた。
会場には約130人が来場した。福島市の女性(53)は「(古関が)大衆の心をくみ取って作曲に取り組んだことがよく分かった」と感心した様子。同市の男性(34)は「どの時代の古関メロディーも"応援歌"であったことが理解できた」と振り返った。