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“歩く肺炎”マイコプラズマ肺炎が大流行、子どもにも重症化リスク? 検査や受診は? 医師が解説

10/07 10:42

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流行中のマイコプラズマ肺炎、子どもへの影響は?

 今夏に流行し、「歩く肺炎」と言われるマイコプラズマ肺炎。東京都感染症情報センターによると、患者報告数が1医療機関あたり「2.96人」(9月23日~29日)に。1999年の統計開始以来、過去最多を更新していることが報道された。本来、夏に流行するマイコプラズマ肺炎だが、この秋はどうなるのか? ほかの感染症との違いや類似点は? 症状や予防策についても、クリニックフォア内科専門医に聞いた。

【一覧】この症状は…マイコプラズマ? それとも風邪?インフル? 判別の仕方

■“五輪病”と言われるマイコプラズマ肺炎、ウイルスではなく細菌で感染

 夏から秋にかけて急増し、日本のみならずアメリカなど海外でも数年に1度、大流行するといわれるマイコプラズマ肺炎。「4年に1度」夏に増えることもあり、過去には“五輪病”と呼ばれたことも。大人と子ども両方が罹患する感染症で、発熱、全身倦怠感、頭痛、空咳、嘔吐、下痢などの症状がある。ただ、軽度な症状だと風邪と見分けがつきにくいのがやっかいだ。

――なぜ五輪と同じに、4年に一度なのでしょうか?

 「きっかけになったのは1964年の東京五輪の際に流行した後、1968年、1972年、1976年とマイコプラズマ肺炎が流行したからだとされています。直近では少しリズムは崩れていますが、3~4年おきに流行しています。

 数年おきの流行は、集団免疫とマイコプラズマ肺炎のリズムが重なっているからと言われています。マイコプラズマ肺炎は1度感染したら一生涯ならないというタイプのものではなく、免疫はできますが数年経つと弱まってしまいます。例えば子どもが1~2歳でかかった後、免疫が弱くなった5~6歳でまた罹患する。ちょうど学童期となるので、教室など密な環境下で感染が広がり、親も罹患、そして流行するというようなサイクルだと言われています」

――そもそもマイコプラズマ肺炎の感染のメカニズムとは?

 「マイコプラズマ肺炎はウイルスではなく、その正体は細菌です。飛沫や接触が原因で感染するので、ちょうど新型コロナウイルスのようなイメージで考えていただけるとわかりやすいでしょう。比較的、密なコミュニケーションが感染には必要とされるので、学校や家族間などで感染は起こりやすくなります。症状としては発熱、喉の痛み、空咳(たんを伴わない咳)など。そもそも“歩く肺炎”と言われるほどなので、重症感は比較的少ない病気になります」

――重症化するとどうなるのでしょうか?

 「高熱が続いたり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。また、下痢などの消化器症状、蕁麻疹や発疹などの皮膚トラブルも、決して多くはありませんが出る方もいます。ただ、注意が必要なのは合併症です。重い合併症では中耳炎、心筋炎、胸膜炎。さらに髄膜炎や脳炎などまで起こることがある。これが重症化のなかでは最も重いケースと言われていますが、致死的なものではないことが多いとされています」

――現在、大流行している要因は?

 「実は、コロナ禍でマイコプラズマ肺炎に罹患する人も減りました。ただ、そうして免疫を獲得しなかった方々が大勢いて、今になって大きな波になっている可能性があります。また、昨年はアメリカでも大流行しましたし、インバウンドでの流入の可能性もあるかもしれません」

――臨床の現場でも患者さんが増えているとか…。

 「増えています。8月頃は、東京都の観測のデータでも新型コロナが多かったのですが、直近はマイコプラズマ肺炎の患者さんが増加しましたね。『頑固な咳は続くが、たんはない』といった症状の方が多く、インフルエンザや新型コロナ感染症のような高熱がでて倦怠感が強い、みたいな状態にはなっていない、という人が多いです」

――「肺炎」とつくだけに、やはり高齢者は注意が必要でしょうか?

 「いえ。実は逆で、60歳より若い方々に多いとされる病気になります。風邪と扱われるケースが多いので明確なデータはないですが、子どもの方が一般の症状は軽いとも言われます。ただ、先述した髄膜炎や脳炎など、重たい合併症を起こすケースは小児に散見され、重症化することもあります」

■感染を疑ったら? 迅速抗原検査は「精度があまり高くないとされている」

――風邪との見分け方もありますか?

 「風邪との区別は、やはり空咳(たんを伴わない咳)です。また、医師が胸の音を聞いても異常は感じられないのに、レントゲンでは影が見える…という特徴もあります。そういったマイコプラズマに特徴的とされる症状や情報を見ていき、判断していきますね」

――コロナやインフルエンザのように、マイコプラズマ肺炎だと判別できる検査は?

 「インフルエンザのような迅速抗原検査もありますが、鼻からの検査では、やっかいなことに精度があまり高くないとされています。確実な検査となると時間と手間がかかります。成人のほとんどは勝手に治ってしまう病気なので、あまり検査することは多くはないです。クリニックフォアでもオンライン診療をしていますが、基本的には先述のように判断し、症状が重い、もしくは強くマイコプラズマ肺炎を疑う場合などは抗生物質を処方します。とはいえ、抗生物質を使わなければ治らない病気ではないので、対処療法の薬だけで療養してもらうこともあります」

――流行を心配している人も多いと思います。最後にアドバイスをお願いします。

 「風邪と症状が見分けづらく、保育園や学校など小児のほうが感染の機会は多いため、お子さんをお持ちの方は心配かもしれません。判断がしにくい場合は、まずはオンライン診療で専門医に相談したり、症状が進むようであれば病院を受診してみてください。お子さんに限らず、周囲にマイコプラズマ肺炎に罹患した人がいないかを知ることも効果的です」

【監修】
日本内科学会認定医。東京都済生会中央病院で研修後、同院にて糖尿病をはじめとした総合診療や医学教育に従事。現在は、若い世代の糖尿病など慢性疾患管理の向上などのため、質の高く、アクセスの良いプライマリーケアクリニックの実現や医療情報の提供を行っている。

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