大熊町は3月5日にJR大野駅周辺など帰還困難区域の一部を先行解除し、野上、下野上の両地区で立ち入り規制を緩和した。吉田淳町長に避難指示解除と規制緩和から半年を迎える町の課題などを聞いた。
―解除と規制緩和から半年の現状は。
「町にとっては昨年4月の大川原、中屋敷の両地区の避難指示解除に次いで2回目の解除となった。震災と原発事故から随分時間がかかったが、『よくここまで来られたな』という思いがある。(解除区域に含まれる)県立大野病院は双葉郡北部にとって基幹の医療施設。県も再開に前向きな姿勢を示しており、今後、病院再開へ前進していくのではという期待がある」
「規制緩和について言えば野上、下野上両地区の除染は完了したが、上下水道などインフラの修繕が完了していない。震災から9年以上がたち水道管の劣化などもあり、修繕はなかなか進まない。両地区のインフラが整えば、避難指示解除に向けた準備宿泊の動きにつながっていくだろう」
―常磐線の全線再開で大野駅が利用できるようになった。
「電車一本で大熊町まで来られるようになったのは大きい。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で利用は落ち込んでいる。新型コロナが収束したら利用促進に取り組む」
―特定復興再生拠点区域(復興拠点)外の考えを聞きたい。
「復興拠点外の帰還困難区域の除染について国はまだ方針を示していない。帰還するかどうかは住民が決めることであり、原発事故前の状態に戻して避難指示解除をするのが国の責任だ。(次期首相には)帰還困難区域の取り扱いなどに責任を持って取り組んでほしい。安倍晋三首相は『福島の復興なくして日本の再生なし』と話した。次期内閣で復興が加速することを期待している」