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【新まち食堂物語】小料理やまびこ・鏡石町 「デカ盛り」見守り一体感

08/04 11:15

  • 動画付き
店を切り盛りする友子さん(左)と亜由美さん。快活な笑顔と豪快な盛りでもてなす(石井裕貴撮影)
店の名物「あんかけ焼きそば」の普通盛り。奥は唐揚げと生姜焼きの「ミックス定食」

 鏡石町を通る国道4号と東北道を結ぶ県道沿いの静かな住宅街に「小料理 やまびこ」がたたずむ。店主の板橋友子(ともこ)さん(64)と娘の渡辺亜由美さん(39)が切り盛りし、母娘ならではのあうんの呼吸で手際良く料理を仕上げていく。カウンター席は調理風景を眺めることができる”特等席”。実家のような温かい雰囲気に包まれている店内で、客は快活な2人と会話も楽しみながら、豪快に盛られた料理に舌鼓を打つ。

 挑戦者が次々に

 店の名物は「あんかけ焼きそば」。「あんが少ないのは”あんかけ”ではない」と友子さんのこだわりが詰まった一品だ。普通盛りが1.6キロ、デカ盛りは2倍の3.2キロ。ホタテやムール貝などの魚介と野菜をふんだんに使ったあんかけは、今にも皿からあふれそうだ。デカ盛り見たさに、どうしても食べてみたいと来店する高齢者や1人できれいに平らげる女性、普通盛りとデカ盛りを勘違いしてオーダーしてしまう人―。うわさを聞き付けた客が町内外から次々と”挑戦”に訪れる。

 「今まで一番早く完食した人は35分くらい。とにかく面白いお客さんが多い」。2人は顔を見合わせて笑う。デカ盛りに挑む人がいると、居合わせた客同士が一丸となって応援し、完食を見守る光景もしばしば。「その盛り上がりの一体感が楽しくて」。どのくらい食べたかを確認する”友子チェック”も一種のコミュニケーションとして定着している。

 ほかにも友子さんがその日の気分で味を決めるという「まかないラーメン」や生姜(しょうが)焼き、唐揚げ定食など、価格に見合わないボリュームに誰もが目を見張る。「1.5人前の計算が難しいから、2人前で作ってしまう。うちの大盛りは基本2倍なんです」と破顔一笑する。

 店は1995年10月にオープン。板前だった夫忠一(ただかず)さんと始めた、夜のみ営業の小料理店が原点だ。宴会場もあり、子どもを育てながら夫婦二人三脚でもり立てていた。しかし2011年3月の東日本大震災で店は被災。11月には忠一さんが病に倒れ、58歳の若さで亡くなった。「夫が亡くなり、店を閉めようと考えたこともあった」と友子さんは振り返る。

 夫婦思い出の味

 「子育てしながら手伝うから」。亜由美さんをはじめとした3人の子どもの後押しがあって、店の継続を決意。昼の営業に切り替えた。「最初は60歳までと思ったけれど、あっという間だった。次は70歳まで頑張ろうかな」。店に飾られている開店当時の写真を眺めて、友子さんはつぶやく。開店当初からある「あんかけ焼きそば」は友子さんの大好物で、忠一さんがよく作ってくれた”思い出の味”が基になっている。

 店は開店から30年を迎える。「要望に応えていたら、開店当時のメニューはほとんどなくなってしまった。お客さんが作ったようなものだね」と亜由美さん。「食べている人を見るのが好きで、おなかいっぱい食べてほしい」。これからも確かな味と愛情あふれる”盛り”で、のれんをくぐる客を魅了していく。(高橋由佳)

お店データ

■住所 鏡石町岡ノ内19の2

■電話 0248・62・7713

■営業時間 午前11時~午後2時

■定休日 日曜日、祝日

■主なメニュー
▽あんかけ焼きそば=980円(デカ盛り3.2キロ=1380円)
▽まかないラーメン=800円
▽生姜焼き定食=980円
▽鳥唐揚げ定食=980円
▽ミックス定食=1000円
▽週替わりお得ランチ=600円

 クレープ店も営業 

 敷地内には「やまびこ プラス」と名付けたクレープ店がある。亜由美さんが食堂の営業終了後、午後6時まで営業する。動物などをモチーフにした「アニマルクレープ」は渾身(こんしん)の逸品。「『盛りの多いご飯を食べた後には食べられない』と言われることもある」と笑う。

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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