プラモデルや模型などを取り扱う福島市新町の「模型の新光堂」は12日、約70年の歴史に幕を下ろす。店主の高野弘さんが6月に93歳で死去し、最近は土、日曜日のみ開店していた。10日には3日間にわたる最後の営業が始まり、別れを惜しむ多くのファンが長年愛された店に詰めかけた。
同店は戦後すぐにスズラン通り(現パセオ通り)で開業し、1955年ごろに現在地に移転。高野さんと妻幸子さん、長女高橋純子さん(63)の家族経営で、豊富な品ぞろえと温かい店の雰囲気が多くの愛好家を引き付けた。
ただ、89年に幸子さんが亡くなり、高野さんも大病を患うなど何度か店の危機に陥った。そんな中でも、高野さんは「お客さんのために店を続けなければ」と奮い立ったという。高橋さんは「本当に店が大好きで、仕事が生きがいの父だった」と振り返る。
10日は午前11時の開店前から客が行列を作った。全商品が半額で販売されており、1日で200人ほどが訪れた。高橋さんは「驚いたが、愛されていたと実感している。お客さんに支えられて最後の営業を迎えることができた」と感謝した。高橋さんの長男雄哉さん(35)と長女山口夏美さん(30)も駆け付け、店の最後を手伝っている。
福島市の住職梅津照清さん(61)は、幼い頃から店に通った一人だ。「大人も子どもも心がときめくパラダイスだった。思い出が詰まった店がなくなるのは悲しいが、今までありがとうと伝えたい」と別れをかみしめた。
11、12の両日の営業時間は午前11時~午後5時。