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【新まち食堂物語】お食事処だいこくや・本宮市 心まで満たす優しい味

09/01 09:00

  • 動画付き
店に立つみどりさん(左)と美喜子さん。父の久さんが手がけたケヤキのテーブルは今も現役。落ち着いた雰囲気で来店客をもてなしている(吉田義広撮影)
看板メニューの「だいこくラーメン」。ハクサイやニンジン、キャベツ、タマネギなど多くの野菜をとることができる

 本宮市白岩の県道119号沿いに木造平屋の店を構える「お食事処(どころ) だいこくや」は、古民家風の落ち着いた雰囲気とボリューム満点の料理で客をもてなす。平日はサラリーマンの胃袋を満たす大衆食堂、休日は地元の憩いの場となり、常連客や家族連れなど老若男女が足しげく通う。店長の宍戸みどりさん(62)は「家庭と仕事の両立が難しかったが、家族とお客さんの支えで地元に愛される店に育った」と感謝を口にする。

 みどりさんの父、国分久さんの好物で創業当初から店を支えてきた看板メニューが「だいこくラーメン」だ。キャベツやタマネギ、キクラゲ、アサリ、カニの爪など10品目以上がふんだんに盛られた海鮮あんかけラーメンで、食材のうま味と野菜本来の甘みを最大限に生かした塩分控えめの優しい味付けが特徴。そのボリュームと手頃な価格で人気があり、みどりさんは「野菜を多く取ることができ、女性の注文も多い。20年以上値上げしておらず、常連客から心配されるが、外食の多いサラリーマンの健康を支えることができれば十分」と話す。

 父の熱意で開業

 「娘たちと飲食店を開きたい」。久さんの口癖が開業のきっかけだった。久さんは本宮市で建設業や木材製材業を営んでいたが、地元でゆっくり食事を楽しめる場所をつくりたいと、三女のみどりさんら娘に声をかけた。みどりさんは「冗談と思っていたが、父の熱意で姉妹全員が集まった。姉妹で飲食店経験はなく、シェフの包丁さばきや味付けをとことん学んだ。無我夢中だった」と振り返る。

 久さんは店舗の運営をみどりさんらに託したが、開業に合わせて店舗に並ぶ木製テーブルを全て手がけたり、文句を言わずに出前に出かけたり、娘たちを陰で支えた。みどりさんは「父の優しい笑顔を忘れることはない。店が長年続き、たくさんの人が料理を食べている姿に喜んでいるはず」と亡き父に思いをはせる。

 東日本大震災などの影響で廃業の危機があった。店舗が壊れるなどの被害はなかったが、客が来ない日が続いた。「商いは飽きないことが大事」「ここがなくなると困る」―。何度も店を畳むことを考えたが、常連客の言葉に励まされた。辛抱強く店を開け続けたことで、震災から3カ月が過ぎたころから徐々に客足が戻ってきた。みどりさんは「3カ月は長かったが、席がお客さんで埋まった時、代え難い安心感があった」としみじみ語る。

 姉妹で切り盛り

 現在、みどりさんと次姉の吉村美喜子さん(66)が中心となって店を切り盛りしている。みどりさんが「女性のみの職場で働きやすく、姉の存在は頼もしい」と話せば、美喜子さんは「しょっちゅうけんかもしたけれど、姉妹だから通じる空気感がある」と互いに信頼を寄せる。店は5月に創業37周年を迎え、40周年に向けて歩みを進める。「地元の味と言ってもらえたり、遠方のお客さんが何度も足を運んでくれたりする」とみどりさん。温かい雰囲気とおいしい料理が心もおなかも満たしてくれる。(斎藤優樹)

お店データ

■住所 本宮市白岩字柳内61の1

■電話 0243・44・3178

■営業時間 午前11時~午後3時、夜は予約制

■定休日 水曜日

■主なメニュー 

▽だいこくラーメン=850円

▽だいこく定食=1100円

▽ホルモン定食=900円

▽五目ラーメン=800円

▽日替わりランチ=950円

 店内を彩る手芸品

 店内に飾ってある笠(かさ)地蔵やコイなどの手芸品は、手芸歴10年以上の美喜子さんが手がけたものだ。ひな祭りに期間限定で飾られる「つるし雛(びな)」は特に人気で、人形を目当てに足を運ぶ人がいるほど。美喜子さんは「喜んでもらえるとうれしいが、少し照れくさい」とほほ笑む。

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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