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【環境考察/農業新時代】土壌に炭素を蓄積 有機農業の拡大目指す

09/01 09:50

有機農業に取り組む大内さん。「関心ある人は増えている」と感じている=7月、二本松市

 キュウリ、トマト、カボチャ…。二本松市で父親を継いで有機農業に取り組み、二本松有機農業研究会の会長を務める大内督(おさむ)(50)の畑では、多くの野菜が栽培されている。「健康にいい作物が育つし、土を見ていると、微生物がたくさんいる。その中で頑張って成長しようという野菜の生命力がすごい」。コメ作りにも励む大内は自然の力を感じている。

 有機農業は近年、温室効果ガスの排出量削減につながるとして注目されている。農林水産省によると、化学的に合成された肥料や農薬に頼ることなく農作物を育てる有機農業では、有機物を含む堆肥などを農地に投入するが、そこに含まれる炭素の一部は分解されず土壌に蓄積されるため、空気中の二酸化炭素(CO2)を減らすことにつながるという。世界では、有機農業が拡大している。

 国内では伸び悩み

 一方、国内ではあまり広がっていないのが現状だ。国によると、国内の耕地面積約440万ヘクタール(2019年)のうち、有機農業は約2.4万ヘクタール。1%に満たない。有機農業はさまざまな利点がある一方、労力や販路、価格、農業者の育成などの課題が背景にあるとみられる。

 国は、21年に策定した「みどりの食料システム戦略」の中で、有機農業の面積を50年までに100万ヘクタールにする方針を掲げた。戦略を踏まえ、農水省は地域ぐるみで有機農業に当たる産地創出を進める市町村を支援する「オーガニックビレッジ」を推進し、県内では、23年と24年に二本松市と喜多方市がそれぞれ「オーガニックビレッジ宣言」をした。

 CO2排出削減へ

 両市は5年後の目標を掲げ、推進団体を設立して面積拡大や販売促進などに当たる。喜多方市は年間の温室効果ガス排出量をCO2換算で392トン減らす目標も掲げた。「数字で示して分かりやすく発信していきたい」(市農業振興課)としている。

 喜多方市熱塩加納町で古くから有機農業に取り組み、有機農業研究会「緑と太陽の会」の会長を務める原源一(76)は「有機農業の良さを健康や脱炭素などの面からも考えるきっかけになってほしい」と願う。その上で有機農業を広げるために「土の中の生態系が果たす役割などをしっかり理解することが必要。そこから技術を高めたり、販売先を探したりしていけばいいのではないか」と話した。(文中敬称略)

          ◇

 みどりの食料システム戦略 地球温暖化対策や環境負荷を低減する取り組みを盛り込んだ農林水産省の中長期計画。2021年5月に策定された。具体的には50年までの農林水産分野の二酸化炭素排出量実質ゼロや化学農薬の使用量の半減、有機農業の面積拡大など。実行に向け、22年7月に「みどりの食料システム法」が施行された。

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