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ボッチャ「銅」…遠藤裕美、母と夢つかむ 心身支え、プレーも補助

09/03 09:05

 親子二人三脚でメダルを手にした。パリ・パラリンピックのボッチャ個人戦の女子(脳性まひBC1)で銅メダルを獲得した遠藤裕美(38)=県ボッチャ協会、福島市出身。車いすを補助し、ボールを手渡すアシスタントを務めたのは母さとみさん(59)で、1日(日本時間2日未明)の3位決定戦を家族ならではの”あうんの呼吸”で制し、一緒に最高の笑顔を輝かせた。

 巡ってきたチャンスを逃さなかった。遠藤は自慢の遠投を生かし、日本のボッチャ女子選手では初めて個人種目の表彰台に立った。男女混合で争った東京大会までは縁遠かったパラリンピックで躍進し「時間はかかっても、輝けるものは取れる」と誇らしげに笑った。

 3位決定戦はロングスローを得意とする選手同士の対決となった。お互いがジャックボール(目標球)をコート奥に投じ「どっちが先に(目標球に)付けられるか」の我慢比べ。障害が重い車いすの選手がボールを何度も遠くに投げるのは体力を消耗するため、近場で勝負する選択肢もあったが「やりたくなかった」と遠藤。精度で上回り、1点も失わずに完勝した。

 遠藤にとって初出場となったパラリンピック。普段の力を発揮できた裏には家族の支えがあった。24歳で競技を始めてから、アシスタントは主に日本協会のスタッフが務めていた。ただ、遠藤の障害の特性上、薬の服用や食事の管理が必要で、慣れない遠征先では体調を崩したこともあった。

 転機は2022年にリオデジャネイロで開かれた世界選手権だった。看護師のさとみさんが帯同してアシスタントを務めると、団体戦で銅メダルを獲得。それから、さとみさんがアシスタントに付くようになり、23、24年の日本選手権連覇など、大舞台での飛躍につなげていった。

 気心の知れた親子だからこそ分かる、細かい感覚や体調の変化―。「精神的な安定剤になっている。親子だから時には嫌になったこともあったが、今となっては心強いパートナーだと思っている」と語っていた遠藤。この日の3位決定戦でも2人の息はぴったりで、さとみさんが心の中で「うまくいけ」と一球一球に願いを込めてボールを手渡すと、呼応するように遠藤が精度の高い投球を何度も成功させた。

 勝利が決まると、グータッチをして喜びをかみしめた2人。普段の練習では父芳文さん(64)もサポートした。親子で戦った初の夢舞台は、メダルという形で結実した。

 恩師「積み重ね実った」

 県ボッチャ協会理事で遠藤を約10年間、指導してきた若松伸司さん(56)=大笹生支援学校教諭=は「練習の積み重ねの成果が実って良かった」と喜んだ。試合前には、遠藤からLINE(ライン)で「パリ楽しいです」とメッセージが届き、安心して試合を見ることができたという。若松さんは「帰ってきたらメダルを見せてもらいたい」と手放しでたたえた。

 白河市で7月下旬にボッチャ日本代表の直前合宿が行われた際、練習相手となった高松祐一さん(71)=県ボッチャ協会=は「これまでの努力が報われた」と笑顔で語った。

 高松さんは、県内で毎月開かれる同協会の練習会で遠藤と技術を磨いてきた。「一緒に練習した仲間が銅メダルを取って本当にうれしい。次の団体戦では金メダルを獲得してほしい」と期待を込めた。

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