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【9月19日付編集日記】読書離れ

09/19 08:00

 泥の匂いと草刈り後の青臭さが、風に乗って運ばれてくる―。釣り師の佐藤成史さんは、集中豪雨で河川の水位が急激に上昇する鉄砲水の前兆を、こう表現する

 ▼渓流の天候急変は日常茶飯事。「今日は夕立が来るぞ」という地元の人の注意を心に留めていたことで、難を逃れたこともあったという。釣りの欲にかまけていては、迫る危険の兆候を見落としてしまう(「鱒虫釣人(ますむしつりびと)戯画」ふらい人書房)

 ▼文化庁が2023年度に行った国語世論調査で、電子書籍を含めて、1カ月に本を1冊も「読まない」と回答した人が初めて60%を超えた。18年度の前回調査から一気に15ポイント増えた

 ▼読書量の減少傾向にも歯止めがかからない。16~19歳が読まない理由は、スマートフォンなど「情報機器で時間が取られる」が70%に上った。読書離れが叫ばれて久しいが、世の中が思っている以上に早く進んでいる。背景にはインターネット動画やアプリの充実などがあると指摘されている

 ▼懸念されるのは、興味のある情報にばかり接して視野が狭くなり、トラブルに遭ったり、誤った情報を信じてしまったりすること。老婆心ながら本を読んでほしい。きっと危険な兆しを捉え、乗り越える力となる。

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