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【9月26日付編集日記】かもめ・ドジョウ・アサガオ

09/26 08:00

 チェーホフの代表作「かもめ」の題名は、女優を志す主人公ニーナが、自らをその鳥に例えたせりふを何度も繰り返すのに由来している。私はかもめ―

 ▼ニーナの語るかもめは、場面場面で意味合いを変えていく。ある場面では、愛する人がいる場所に吸い寄せられる自分の写し絵。中盤では猟銃に撃たれたかもめを、男にもてあそばれ、捨てられた己とだぶらせる

 ▼ニーナは物語の最終盤にようやく、「私はかもめ、いいえ、私は女優」と、かもめに例えていた自分からの脱却を図る。かつて夢見ていたような大女優になる―。元恋人にそう宣言する

 ▼私はドジョウ、いいえ、私はアサガオ―といったところだろうか。かつて、泥地をすみかとするドジョウを自称していた元首相。今度は自らの率いる党をアサガオに例えて、花を咲かせるのに必要なのは夜の闇と冷たさと強調し、私たちはそれを知っていると訴えた

 ▼自らの失敗から目を背けない心意気やよし。ただ党内では、人事を巡り、早くも不協和音が聞こえる。アサガオは咲いているうちは美麗だが、あっという間にしぼむのが難点。咲いてもすぐに生気を失ってしまえば、いつか来た道だ。そうならないための知恵が問われる。

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