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【新まち食堂物語】マミー・福島市 家庭の味と名物の盛り

10/06 13:30

  • 動画付き
調理場に立つ阿部さん(左)と三浦さん。豪快な料理は訪れた客を満足させる(吉田義広撮影)
約8合のご飯を使った名物のカツカレー。これを目当てに県外から来る人もいる

 実家に帰ってきたような温かみを感じる福島市の民家に掲げられた「マミー」の看板。名物のカツカレーはご飯が「少なめの少なめ」で2合、「普通盛り」で8合と壮観だ。スパイスが利いたルーも皿からあふれるほどで、普通盛りには無料で「追いカレー」も付く。

 味はさることながら、盛りの良さが評判の店を営むのは“マミー”こと阿部恵美子さん(53)。「おなかいっぱい食べてほしい」と、約20種類の定食メニューはどれもご飯やおかずが山のように盛られ、阿部さんの豪快さと深い愛情があふれ出ているようだ。

 昼は近くの福島学院大の学生や会社員らであふれ、週末は食べ応えのある料理を目当てに県外からも常連が訪れる。カウンターのみ5席ほどの店内はいつもにぎやかで、阿部さんは「いろんなところから来てくれた人が『こういうお店があってよかった』と言ってくれる。そういう声は励みになるよね」と目を細める。

 幼稚園教諭だった阿部さんがこの道を志したのは、子どもたちに料理を褒められたのがきっかけだった。3人の子どもが食事の度に笑顔でほおばる姿がうれしくて、どんどん料理の楽しさにのめり込み、30歳で調理師免許を取得した。阿部さんのお手製料理は子どもの友人にも好評で「よく、うちで夕飯を食べていく子もいた」という。

 自宅で腕をふるう機会が増える中で、いつしか、自分の店を出す夢を持つようになり、49歳で念願の店を構えた。店名は阿部さんが当時子どもたちから呼ばれていたあだ名の「マミー」に決めた。子どもの友人は大人になった今も店を訪れてくれていて「そういうつながりがずっとあるのはうれしい」とほほ笑む。

 繁盛店を切り盛りするのは阿部さんと店長の三浦りえ子さん(41)、3人のパート従業員の女性5人。皆、食べることが大好きな健啖家(けんたんか)で、大盛りメニュー誕生の背景には「自分たちが満足できる量を出す店にしたい」という思いがあった。ただ、「あくまでお客さんにおいしく食べてもらうことが大切」と阿部さん。客に合わせて量を少なめに調整するなど食べる人の気持ちを最優先する。

 師弟の信頼厚く

 阿部さんはマミーでの仕事を終えると、夜はスナックのママとして忙しい日々を送る。三浦さんは元々はこのスナックの従業員で、夢を追う阿部さんについてきた。それまで「包丁を握ったことがなかった」という三浦さんは、阿部さんの下で修業を積み、今では唐揚げやとんかつの調理を任されるようになった。阿部さんが「厳しく教えたが、くじけずについてきた。本当に信頼している」と話せば、三浦さんは「もっとこの店の味をたくさんの人に知ってもらいたい」と師弟の信頼関係は厚い。

 開店から3年がたつマミーの原点は、かつて、子どもたちがにぎやかに食卓を囲んだ「家庭の味」だ。「この店のこの味を選んで来てくれる人のために、これからも『家庭の味』を守り続けていく」。“マミー”の言葉には深い愛情とともに固い決意がにじんでいた。(高田泰地)

お店データ

■住所 福島市宮代宝田前1の14

■電話 024・572・3001

■営業時間 午前9時30分~午後7時(定食は同2時30分)

■定休日 日曜日、祝日。※木曜日は仕込みのため臨時休業する場合がある。電話で確認が必要

■主なメニュー
▽カツカレー(普通盛り)=880円
▽からあげ定食=880円
▽焼き肉定食=800円
▽とんかつ定食=850円
▽日替わり定食=750円

 多彩な総菜も人気

 「元々は総菜屋をやりたかった」と阿部さん。店内のショーケースには多彩な総菜が並ぶ。「毎日メニューを考えるのは大変」と話すが、こだわりの食材を使ったメニューは人気。定食の提供終了後には総菜だけを買いに来る人も多く、春巻きや唐揚げなどは売り切れることも。

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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