第78回国民スポーツ大会(国スポ)は6日、佐賀県で各競技が行われ、福島県代表でウエイトリフティング成年男子67キロ級の近内三孝(みつのり)(28)=ビッグワンアスリート、田村高卒=がスナッチ145キロ、ジャーク173キロでともに1位となり、トータル318キロで優勝した。スナッチとトータルで日本新記録を樹立した。
近内はスナッチの2回目で大会記録を5キロ上回る140キロを挙げると、最終3回目で自身の持つ日本記録を2キロ更新した。ジャークは最終3回目で大会新記録の173キロをマークした。
近内は「優勝の目標に加えて、記録更新を狙っていた。達成できてうれしい」と喜びを語った。
「100点」の試技、現役に別れ
万感の思いをのせた雄たけびを2度、会場にとどろかせた。6日に佐賀県で行われた国民スポーツ大会(国スポ)のウエイトリフティング成年男子67キロ級に出場した近内三孝が、自身の持つ二つの日本記録を塗り替えた。大舞台で偉業を果たしながらも「今回を現役最後の大会にしようと思っていた」と、14年にわたる競技人生の終幕を胸に臨んだことを明かした。
突き詰めてきた力と技術の集大成を体現した。スナッチは1回目で132キロを軽々クリアし、続く2回目で大会新記録の140キロをマーク。「1、2回目の成功が大きい。観客の声援も力をくれた」。終わってみれば日本新をたたき出す最終3回まで一度のミスもない完璧な試技を披露した。
ただ、自身の底力はここから発揮される。ジャークに備えたアップ練習で両脚をつるアクシデントが発生するも、姿勢はぶれない。試技を終えるごとに監督やコーチに両肩を支えられて退場し、脇でマッサージを受けたほどだが「これまでの経験値がなせた力と技」とジャークでは大会新を成し遂げ、トータルでも自己の日本記録を更新した。
競技との出合いは高校1年6月にさかのぼる。「ウエイトで自分より強い人がいないことを証明したい」との勝ち気とも取れる覚悟が原点だ。鍛え方によって成績という数字が変化することで成長を実感する日々だった。
今夏のパリ五輪が競技者として分かれ道になった。これまで「ウエイトに懸けてきた人生」だったが、春先の選考漏れが競技者としての葛藤にさいなまれ、終着を意識するようになった。
国スポに臨むに当たり、意識したことはモットーである「練習から競技を楽しむ」こと。笑顔を絶やさずひたすらバーベルを挙げ、筋トレを続けることできょうの本番につなげた。
二つの日本新を成し遂げた。スナッチ、ジャーク、そしてトータルで優勝の結果に「100点」としたが、少し間を置いて「やっぱりジャークも日本新を狙いたかった」と苦笑い。
日本から世界の舞台へ挑んだ男は「指導者の道も見据えながら挑戦を続けたい」ときっぱり。際限なく高みを見据えてきた姿勢と経験は、きっと後進の糧になるはずだ。(小野原裕一)