福島大27年度に再編 3学群5学類から4学部へ、総定員は維持

10/10 08:20

 福島大は2027年春の入学生を対象とした26年度の入試から、現在の3学群5学類を教育、経済経営学類と行政政策学類を統合した新学部、理工、食農の4学部に再編する。4学部全体の学生の定員数(985人)は当面維持する方針。新学部の名称は来年1月まで、学部ごとの定員配分やカリキュラムについては来年4月までに決める。2004年の学群・学類制導入から約20年ぶりに学部・学科制に全学再編する。

 三浦浩喜学長が9日の定例記者会見で、全学再編の構想を盛り込んだ「福島大グランドデザイン2040」を発表した。構想の概要は【図】の通り。04年に導入した学群・学類制は、学群内の領域で教員や学生が複数の学問分野にまたがって研究できる利点があるが、三浦学長は「教育組織が層状になっていることで、地域の人や高校生にとって分かりにくいものになっている」と説明。学部・学科制に再編した上で、学際性を担保するため、他学部の専門教育科目を修得する「融合新領域(仮称)」を新設する方針を示した。新領域では「放射線×学校教員」「気候変動×公務員」「ロボット×農業」など学部間の垣根を越えて人材を育てるためのパッケージを用意する。

 教育学部は宮城教育大など他大学や県教委、高校との連携プログラムを新設し地域一体で教員を養成する体制をつくるほか、教員不足への対応を強化する。付属学校園も大規模に改革する予定で、来年1月までに改革の詳細を詰める。

 全学再編時の在学生は卒業まで現行のカリキュラムで学べる体制を取る。

 新学部は将来像見えず

 【解説】福島大の全学再編の背景には、急激な人口減や財政問題への強い危機感がある。三浦浩喜学長は会見で運営費交付金の減少や、2040年に定員充足率が約8割まで落ち込む予測など、国立大学法人を巡る窮状を挙げ「激変する社会の諸課題を突破するには必要な改革。柔軟で強靱(きょうじん)な大学に変えていかなければならない」と強調。「稼ぐ力」を生み出すため、研究分野を絞り込み、段階的に教員数を減らす方針にも言及した。

 一方、今回一定の構想が示された教育学部以外の3学部の将来像はまだ見えない。経済経営と行政政策の統合による新学部についても「シナジー効果を期待している」と述べるにとどまり、新名称もカリキュラムも先送りとなった。経済は前身の福島高等商業学校から数えれば103年、行政は37年と共に長い歴史があり、統合によって誕生する新学部への関心は高い。

 1949年の創立から75年、地域に根差し、6万6千人の卒業生を送り出してきた福島大。震災後はいくつものプロジェクトを掲げ復興を後押ししてきた。県内唯一の国立大学法人として、県民から求められる役割に応える将来像を示すことができるかが、今後の焦点になる。(渡辺美幸)

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