双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)にある農地で、今年から野菜の栽培を始めた黒津今日子さん(34)=福島市出身=は28日、初めての収穫を迎えた。大きな葉の間に実ったブロッコリーを一つ一つ手で刈り取り「しっかり実って安心した。まだまだやることはあるが、素直にうれしい」と喜びをかみ締めた。
黒津さんは昨年10月、同町で事業展開を計画していた石川県の農業生産法人「安井ファーム」に入社。同町での事業の担当社員として今年6月から町内に移り住み、前田地区の農地でブロッコリーやキャベツなどを育ててきた。
遊休農地が広がる人けのない畑で孤軍奮闘する日々だったが、町民ら地域の人の支えに救われたという。「差し入れしてくれたり、気にかけてくれたりして、一人じゃないんだと思えた」と黒津さん。収穫したブロッコリーを手に「支えてもらったみんなに食べてもらいたい」と感慨に浸った。
今後、収穫した野菜の放射性物質検査をした後で、加工会社に卸す予定だ。また、地域の飲食店に卸すことも検討しているという。黒津さんは「これだけ手つかずの農地がある中で、町の農業再生に向けた足がかりになるといい。双葉の土と気候の特徴を生かして、もっとおいしい野菜を育てていきたい」と思い描いた。