東北電力は29日、運転停止中の女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の原子炉を起動し事実上、再稼働させた。再稼働は東日本大震災の被災地に立地する原発で初めて。東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても全国初。出力は82万5千キロワットで、東北電は11月上旬の発電再開、12月ごろの営業運転の開始を目指す。
午後7時、2号機の中央制御室で運転員が原子炉のスイッチを切り替え、原子炉を起動させた。その3分後には核分裂反応を抑えていた制御棒を引き抜く作業を開始。核分裂反応が始まり、30日午前0時12分、核分裂が安定して継続する「臨界」に達した。核分裂で生じた熱エネルギーで蒸気を発生させ、規定の圧力と温度に到達するとタービンを回転させて発電する。
作業は24時間態勢で行われ、運転員1班8人の全6班が交代で運転や監視を行う。東北電によると、1週間程度で発電再開の段階に移行する見込み。
再稼働に当たり、東北電の樋口康二郎社長は「引き続き安全確保を最優先に対応する。BWR初の再稼働は復興につながるとともに、電力の安定供給やカーボンニュートラルへの貢献という観点からも大きな意義があると認識する」とのコメントを発表した。
女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発で、最大約13メートルの津波が襲った。震災前、敷地は海抜14.8メートルだったが、冷却用水を取り込むための取水路から海水が流入し、原子炉起動中だった2号機原子炉建屋地下が浸水。外部電源は5回線のうち4回線が停止したが、残った電源で冷却を維持し、1~3号機を冷温停止させた。
東北電は再稼働に向け今年5月、2013年に着手した2号機の安全対策工事を終了。国内最大級となる海抜29メートルの防潮堤などを整備し、原子炉建屋の耐震性も強化した。9月には原子炉に核燃料560体を装填(そうてん)する作業を終えていた。
女川原発2号機の再稼働により、国内で稼働する原発は13基となった。