飯坂の地名はアイヌ語が由来?。福島県福島市の飯坂町史跡保存会顧問の小柴俊男さん(84)は、同市飯坂町の多くの地名が、その場所の地形を示すアイヌ語を漢字に当てはめたものだとする研究成果を冊子にまとめ、発表した。史料もなく確証が得られた研究成果ではないが、小柴さんは「地名をアイヌ語に訳すと驚くほどしっくり来る。鯖湖(さばこ)や十綱(とつな)など難しい地名の意味も説明が付く」と自信を見せる。
小柴さんは会津出身で、仕事の都合で同市飯坂町に移り住んだ。2000年に定年退職し、知人に誘われて同史跡保存会に入った。飯坂の面白い地名を調べるうちにアイヌ語に出合い、これまで約20年間、地名とアイヌ語の関係一本に絞って研究。成果を「私考(しこう)地名由来」という冊子にした。
飯坂温泉発祥の地とされる鯖湖。小柴さんによると、鯖湖はアイヌ語の「サパ(頭)・コツ(谷)」が由来と考えられる。渓谷にあり、その谷の頭に湧き出したのが鯖湖湯(サパ・コッ・ユ、谷の頭に湧き出した湯)で、アイヌ語では「コッ」の「ツ」は発音しないため、「サパコ」になったという。
飯坂のシンボル「十綱橋」でも知られる十綱は、アイヌ語の「トゥ・トゥンナイ・ナユホォパケ」が由来と考えられる。二つの谷川の出合うところという意味があり、小柴さんは、赤川と摺上川の合流点を指していると推測する。
小柴さんは、古来飯坂に住んでいた人たちが、アイヌ語かアイヌ語に近い言葉を使っており、サパコやトゥトゥナを漢字化して現在の鯖湖や十綱となった可能性があるとする。冊子ではほかにも、八景(はっけい)(パケ、頭や岬頭の意味)や志和田(しわだ)(シ・ワッタル、大きな・淵の意味)など、地名と由来になったと考えられるアイヌ語を解説する。小柴さんは今後も生涯を懸けて飯坂の地名の由来を解明していく覚悟だ。