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【8月30日付社説】秘書給与の不正/国民を欺く行為は許されぬ

2025/08/30 08:03

 またもや国民の政治不信を増幅させる嫌疑といえる。事実であれば、国会議員として断じて許されない。議員辞職は当然だ。

 東京地検特捜部が、公設秘書の給与を国から不正に受給した詐欺容疑で、日本維新の会の石井章参院議員(比例)の事務所など関係先を家宅捜索した。勤務実態のない秘書の給与の詐取疑惑に加え、事務所へのキックバックの疑いも浮上している。

 国会議員が3人まで雇える公設秘書への給与は、国費から支払われる。原資は税金だ。秘書の給与で不正を働いたのであれば、国民の負託に応えるどころか、国民を欺いたことに他ならない。

 20年以上前にも、国会議員らによる秘書給与の詐取事件が相次いだ。当時は秘書給与を議員事務所の口座などに振り込ませ、議員が流用する手口が一般的だった。このため2004年に秘書給与法が改正され、給与全額の直接支給や秘書に対する寄付要求の禁止などが盛り込まれた。

 今年3月、公設秘書給与など約350万円を国から詐取した罪で自民党に所属していた広瀬めぐみ元参院議員が有罪判決を受けている。党は違えども、石井氏はこの事件を認識していたはずだ。しかし、国会議員として襟を正すどころか、同様の不正に手を染めていた可能性がある。当事者意識の欠如にあきれる。石井氏は説明責任を果たし、事実関係を明らかにしなければならない。

 石井氏が所属する日本維新の会は、派閥の裏金事件など、自民党の政治とカネを巡る一連の問題を厳しく追及した。使途公開が不要な政策活動費の廃止や議員報酬や定数の削減、企業・団体献金の全面禁止など、有権者に「身を切る改革」の断行を強く訴えてきた。

 しかし、地方議員を経て、衆院1期、参院2期のベテラン議員が言行不一致であったのならば、党の責任は極めて大きい。中司宏幹事長は「捜査に全面的に協力する」と述べている。捜査とは別に、党所属の国会議員全員の秘書給与の実態を調査し、その結果をつまびらかに公表する必要がある。

 04年に制度が変更された以降も給与を受け取った秘書が議員本人にその一部を渡すようなケースがあると指摘されている。再発防止のため法律を改正しても、議員本人がその旧態依然の体質から脱却しなければ、政治とカネの問題はいつまでも解消されず、国民の政治への信頼は取り戻せない。

 与野党ともに身内に甘い考え方を捨て、必要な改革をただちに実行すべきだ。

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