• X
  • facebook
  • line

湖南七浜観光、自然と両立…猪苗代湖畔、キャンプ場整備で観光誘客へ

2025/10/16 08:35

完全予約制の有料キャンプ場として20区画のサイトを設けた舟津浜=9月、郡山市湖南町
イベントエリアとなった舘浜。キッチンカーが並び、各種アクティビティーが行われた

 郡山市湖南町の猪苗代湖畔にある「湖南七浜」で、観光誘客に向けてキャンプ場などを整備する計画が動き出した。自然との共生が可能な観光拠点につなげようと、七浜のうち舟津浜と舘浜で、市が先月、有料のキャンプや多彩なイベントを体験できる実証実験を試みた。猪苗代湖のラムサール条約登録をきっかけに、地元で湖畔の自然保護と観光拠点化の両立への気運が高まる中、オーバーツーリズム(観光公害)への対応も求められる。

  普段はいつでも無料でキャンプができる舟津浜に仮設の管理棟やトイレ、シャワー設備が並んだ。実証実験で舟津浜でのキャンプを有料の完全予約制としたためだ。近くの舘浜は「イベントエリア」と位置付け、テントサウナや湖上に浮かぶサップを体験できるようにした。地元事業者らが飲食物を提供するキッチンカーを出店した。

 実証実験は9月19~23日の5日間行われた。週末の同20、21の両日の宿泊予約は100%で、市の担当者は「二つの浜の機能を分けることで、来場者が泊まってイベントも楽しむといった滞在時間の延びにつながった。有料化してもニーズがあることが分かった」と手応えを語る。

 市によると、来場者からは「トイレやシャワーがきれいで、子どもでも利用しやすかった」「管理人がいる管理棟もあり、夜間も安心してキャンプができた」との声が聞かれたという。

 キャンプ場などの整備に向け、市は民間の参入を念頭に現地で提供するサービスや施設管理の質の向上が観光誘客の増加につながるとみている。有料化で得られた収益の一部を自然環境保護のために還元していく方策も検討する。地元関係者は、こうした取り組みがラムサール条約の柱となる「保全・再生」「賢明な利用」「交流・学習」との相乗効果をもたらし、好循環を生むよう期待している。

 マナー啓発必要

 湖南七浜は湖水浴やバーベキュー、キャンプを楽しむ市民や観光客でにぎわう一方、ごみの放置などのマナー違反が課題になっている。ごみを分別せず集積所に捨てたり、燃えかすを混ぜて投棄したりするケースも出ている。実証実験でごみ処理のマナー違反は見られなかったが、秋山浜の無料駐車場のごみ集積所で同22日に火災があった。過去には騒音や迷惑駐車も散見され、観光客の増加が地域の生活環境に及ぼす悪影響にも備える必要がある。

 3月まで湖南町区長会長を務めた佐藤宗良さん(70)は「これまで湖南の浜の利用はフリー(無料)だったが、再整備や有料化により魅力と快適性が増し、観光客が増えれば地域経済も活性化するのでは」と期待する。その上で「分かりやすい多言語のサイン(看板)などを多く設置し、禁止事項の周知やマナー順守を促していく対応も必要だ」と提言した。

     ◇

 ラムサール条約 特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約で1971年、イラン・ラムサールで開かれた国際会議で採択された。日本は80年に加入。湿原や湖沼、河川などの湿地の保全と賢明な利用、交流・学習の推進が目的で、国内の登録湿地数は54カ所。県内では2005年の尾瀬に続き、今年7月に猪苗代湖が2カ所目として登録された。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line