「人生を狂わされました」。西日本出身の50代の会社員女性が取材に応える言葉には、悔しさがにじんでいた。女性は5~6年前に同年代の男性からストーカー行為や暴行を繰り返され、「夜逃げ同然」で地元を離れることになった。
顔見知り程度
顔見知り程度だった男性はある日突然、女性に交際を求めてきた。女性は断ったが、昼夜問わず電話や通信アプリで連絡が来るようになった。聞いてもいないのに、男性からは私生活を報告するメッセージが一方的に届いた。
「電話番号を教えたことはない」と女性は語る。しかし男性は電話番号だけでなく、住所や家族構成などあらゆる個人情報を調べ上げていて、女性の自宅に押しかけた。
女性には子どもがいたが「俺の家に来なければ子どもの学校に行くぞ」などと脅されることもあった。渋々応じて家に行くと、「お前を殺して俺も死ぬ」と首元に包丁を当てられた。「俺がお前のことを好きなんだから、お前も俺のことが好きだ」。男性から支離滅裂な主張を押しつけられ、婚姻届に署名するよう強要された。危険を感じて署名したが、住所を変更し役所が受理できないようにして難を逃れた。
生活を戻して
けがをするような暴行も数え切れなかった。女性はずっと地元で過ごそうと考えていたが、身の危険を感じ、慣れ親しんだ土地を離れることを決断した。「私の生活を元に戻してほしい」。かなわないと分かっていても、そう思わざるを得ない。
県警によると、本県では昨年、ストーカー規制法に基づく警告が27件、禁止命令は13件出された。同法違反による摘発も8件あった。被害者と加害者の関係は交際相手、職場関係、配偶者のほか、面識なしなど多岐にわたる。
県警は、県の再犯防止推進計画に基づき、ストーカー加害者に対して精神科での治療などの有効性を示して受診を促している。しかし、受診するかどうかは加害者自身に委ねられているのが実情だ。
加害者治療を
ストーカー問題に詳しい新潟青陵大大学院臨床心理学研究科の小林大介准教授は「ストーカー規制法違反の法定刑は2年以下で、仮に実刑となったとしても被害者としては『加害者がまた社会に復帰したら』という恐怖感がある」と指摘する。「被害者は行為と人の両方に対して恐怖を感じる。加害者に治療を義務づけ、加害者の執着を弱めることが被害者にとって重要だ」
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ストーカー規制法 1999年に埼玉県桶川市で起きた女子大生殺人事件を機に、2000年に施行された。2021年の改正では、衛星利用測位システム(GPS)等位置情報を発信する機器を無断で取り付ける行為などが規制対象に加えられた。政府は今後、被害者の申し出がなくても警察が職権で警告可能にすることなどを検討しており、今国会への改正案提出を目指している。
