「相手を殺したいと思った」。茨城県の30代女性は取材に対し、2人の男性につきまとい行為をした過去を明かした。相手を傷つけることはなかったが、ストーカー行為から殺人などの重大事件に至ったケースと自身が重なる。「やったか、やらなかったかの違いです」。思いとどまらせた要因の一つが、全国でも珍しいという加害者支援団体による衛星利用測位システム(GPS)での監視だった。
破局 納得できず
1年ほど交際した男性と破局したのは昨年9月ごろ。女性は終わり方に納得できず、男性の自宅を職業などから調べ上げて特定した。通信アプリ「LINE(ライン)」で何度も男性にメッセージを送るなど連絡も試みた。しかし、返事はなく、その態度は失恋の悲しみを「憎悪」に変えた。自宅を訪れても直接会えず、数回訪問した後、LINEをブロックされた。「次、彼の家に行ったら、何かやっちゃうかも」。不安に駆られた。
昨年10月、女性は大阪府を拠点にストーカー加害者の更生支援に取り組む任意団体「ストーカー・リカバリー・サポート」に相談。加害者更生支援プログラムに参加し、同意の上でGPSでの監視を受けるようになった。同団体がスマートフォンのGPSアプリでプログラム参加者の居場所を把握、被害者の自宅などに接近すると電話で警告し、それでも止まらない場合は警察に通報する仕組みだ。
脳裏よぎる不安
女性は新たに別の男性と交際を始めた。男性の存在が支えになり、プログラムへの参加とGPSの位置情報を伝えることもやめたが、その関係も今年5月、相手から唐突に断たれた。女性の心に再び、恨みや憎しみが込み上げた。その頃、川崎市で男が元交際相手を殺害したとされる事件が報じられ、女性の脳裏をある不安がよぎった。「同じようなことをしてしまうかも」。再び同団体に助けを求めた。女性は当時の心境を思い返す。「突然絶たれる終わり方が良くなかった。それが私をストーカー行為に走らせた」。
県警が昨年認知したストーカー事案の行為形態はつきまとい、待ち伏せが最も多く、加害者を被害者に近づかせないようにする取り組みが求められる。同団体はその方策として「司法が加害者に対し、GPSによる監視と治療を義務化するべきだ」と提起する。
女性は当初、GPSに抵抗もあったが、今ではこう思っている。「GPSは相手も自分も傷つかない。私のような人間には必要だと思う」
