パリへの出発前日となる24日、柔道の永瀬貴規は普段通りに拠点の筑波大で稽古をしたという。航空機に乗り込む直前、涼しい顔で言った。「機内でオフになるので、そこで休めばいいでしょう」
日本女子の増地克之監督は筑波大を率いた頃、入学当時から永瀬を指導した。初代表の2014年世界選手権前に「いずれは世界を取るし、五輪も制する。チャンピオンにふさわしい人間性だ」と断言。妥協のない稽古、謙虚な姿勢、冷静な考え方など長所が次々と出てきた。その教え子は五輪2連覇の快挙を遂げた。
13年の世界ユニバーシティー・カザン大会で優勝した。激戦の後に表彰式や記念撮影が長引き、宿舎に戻ったのは夜遅く。
引率の塘内将彦コーチによると、部屋へ入る直前に「先生」と呼ばれて振り向くと「大会前からずっとサポートしていただき、本当にありがとうございました」と頭を深々と下げる19歳の永瀬がいた。
永瀬はその行為を「お世話になった方への感謝は当然のことです」。30日の決勝を制した後、表情一つ変えず畳で礼をした。振る舞いも金メダル級だった。