サッカーの母国イングランドの「プレミアリーグ」は世界最高峰のリーグとして知られる。元イングランド代表主将デービッド・ベッカムやポルトガル代表クリスティアノ・ロナルドが世界的スターとしての名声を確かなものとし、三笘薫や香川真司といった日本を代表する名手たちも活躍の場を求めて海を渡った。
リーグの人気は欧州域内にとどまらず、視聴世帯はアジアや北米、アフリカなどを含めた約190カ国・地域の9億に上る。市場規模は1兆円とスペインやドイツの約2倍に及び、イタリア、フランスを含めた欧州5大リーグの中で群を抜く。1992年に誕生したプレミアリーグは王室と並ぶイギリスを代表するブランドになった。
ただリーグ発足前はフーリガンと呼ばれる過激なファン集団が暴れ回り、スタジアムでは痛ましい死傷事故も相次ぐなど苦難の時代にあった。どん底の状況から、なぜ成功への道を駆け上ったのか―。元選手やクラブの幹部、サポーターなど時代を知る関係者の証言とともに、イギリスのサッカー界と社会が変ぼうする軌跡を全12回の連載でたどっていく。(共同通信=宮毛篤史、田丸英生)
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第1回
相次ぐ事故や火災で死傷者、暴動と悲劇を経て動き出した改革 -
第2回
1980年代の「5強」がプレミア発足を画策、有料衛星放送スカイで飛躍的な発展へ -
第3回
ブリットポップに乗ってイメージアップ、選手はセレブ化。転換点は1990年ワールドカップ -
第4回
ベンゲル効果で外国人監督が主流に 飲酒文化をなくしプロ意識を向上 -
第5回
栄光の裏で買収騒動に揺れたマンチェスターU、ファンは株主団体を組織し反発 -
第6回
豊富な資金で選手を呼び込みチーム強化、リーグを変えた外国人投資家 -
第7回
拝金主義に嫌気をさしたファンは市民クラブ創設 地域に根差したチーム -
第8回
健全経営でマネーゲームに参戦せず、モデルクラブのルートンとロザラム -
第9回
繁栄支える巨額の放映権料、スタジアム転用や新ビジネスで収益源を多角化 -
第10回
「プラスチック」ファンなど客層変化に賛否 国際化で「本場」の雰囲気が薄れる懸念 -
第11回
取材記者の影響力もグローバル、選手移籍は大ニュース瞬時に100万人に発信 -
第12回
伝統軽視の風潮にイギリス政府も介入 膨れあがるマネーゲーム、正解なき道