東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の論告求刑公判は26日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。検察官役の指定弁護士は「3人は情報収集して対処する義務があったのに、漫然と原発を運転して事故を招いた」などとして、被告の勝俣恒久元会長(78)、武黒一郎元副社長(72)、武藤栄元副社長(68)にいずれも法定刑の上限となる禁錮5年を求刑した。
公判の争点の柱は〈1〉3人は第1原発を襲う大津波を予見できたか〈2〉対策を取れば事故は防げたか―。指定弁護士は論告で、本県沖での大津波の危険性を指摘した政府見解(長期評価、2002年7月公表)に基づき、3人は最大15.7メートルの大津波が第1原発を襲うとの計算結果を報告されていたと指摘。「大津波を予見する機会は何度もあった」とした上で、3人が原発の安全性を自ら確認する義務を怠り、部下に具体的な対策工事の検討、実行を指示しなかったと訴えた。
大津波の予見に基づいて防潮堤の新設、重要施設の改良工事などの対策を取っていれば「確実に事故は回避できた」と主張。全ての対策が完了するまで「原子炉の運転を止める必要があった」とした。
起訴状では、3人は大津波の浸水によって原発事故を招き、長時間の避難を余儀なくされた双葉病院(大熊町)の入院患者ら44人を死亡させたほか、原子炉建屋の水素爆発で自衛官ら13人にけがを負わせた、としている。
27日には、被害者参加制度で公判に参加している遺族の代理人弁護士が意見陳述する。弁護側の最終弁論は来年3月12日に行われる見通し。