今回も新型コロナウイルス感染症、その変異株、特に全国で猛威を振るっているオミクロン株について国立感染症研究所からのデータを交えてお話します。
I.オミクロン株
オミクロン株は前回もお話した通り、集団発生例や家庭内感染が多いことから、これまでの他の株より、感染・伝播しやすいのが特徴です。実際、昨年夏の第5波のデルタ株より、速く感染拡大しており、ほとんどがオミクロン株に入れ替わりました。
【特徴】(図1、図2) オミクロン株に感染した人は一般的にこれまでの通常株やデルタ株より、重症化しにくい可能性が示唆されています。中には無症状の人や微熱、喉のイガイガ感、軽い咳で済んでいる人もいますが、重症化したり亡くなる方もいます。しかし、いくつかの研究報告で、これまでの新型コロナウイルス感染症とは違った特徴があることが分かっています。以下にその特徴を述べてみます。
1.発熱、咳、だるさ、咽頭痛など一般的な風邪症状が中心。 2.これまでの株より、潜伏期間(感染してから症状がでるまでの期間)が短く、潜伏期間の中央値は約2・9日間で、99%が曝露から約6・7日以内に発症。 3.通常株やデルタ株に比べると、味覚障害、嗅覚障害を呈する症例が少ない。 4.成人だけでなく、小児や17歳以下の若者の発症症例が増加。 5.ウイルスの身体からの排出期間が他の株より短期間で、通常株やデルタ株は13日あるいは18日といわれているが、オミクロン株は診断日から10日たっていれば、無症状や軽症者は感染性ウイルスを排出している可能性は低い。 6.入院しなければならないリスクが低い。 7.高齢者を中心に基礎疾患がある人が感染を契機に基礎疾患が悪化する可能性がある。 8.重症化リスクがある程度低下しても、感染例が大幅に増加すれば重症化リスクの低下分が相殺される可能性がある。 9.オミクロン株は気管支内で、デルタ株や通常株と比べて速く増殖するのと対照的に、肺内での増殖速度は相対的に非常に遅い可能性があり、そのためか肺炎症例は少ない。
これらをまとめると、オミクロン株は重症化するリスクが低いのは、ほぼ間違いないようです。しかし、感染しても問題ないと安易に考えるのではなく、年齢や基礎疾患によっては、依然として酸素投与が必要になる可能性があることや、肺炎や呼吸器関連の所見が軽症でも、基礎疾患(糖尿病、高血圧)などが悪化したり、合併症(心筋梗塞、脳梗塞など)を併発する可能性があり、また、軽症でも長期的なオミクロン株による影響、後遺症はまだ不明であり、これから検証が必要となっています。
【子供に対するオミクロン株感染の特徴】
1.オミクロン株感染前の2021年12月では新規陽性者割合が10歳以下で20.7%、10歳から20歳が20.4%でしたが、2022年1月に入ってからはそれぞれ、26.1%、26.8%と急増しています。 2.子供の症状も大人と同様で発熱、咳、咽頭痛などの上気道障害の症状が中心です。 3.子供の重症化もほぼ成人と同等で、オミクロン株感染で入院した子供は0.96%で成人や他の年齢層もほぼ同様でした。小児もデルタ株感染よりは軽症であると報告されています。しかし、感染者数が増加すれば、入院患者も増えてきます。
【オミクロン株に対するワクチンの発症予防効果】
A.2回接種の場合:オミクロン株に対しての発症予防効果はある程度認められますが、デルタ株よりは効果が低いといわれています。ファイザー社製、モデルナ社製共に2回接種後20週を過ぎると、オミクロン株に対するワクチン効果は10%程度に低下するといわれています。 B.3回接種の場合:ファイザー社製、モデルナ社製共に3回接種後にはワクチン有効性は約65-75%、10-14週目には50-60%、15週目以降は40%といわれています。
【オミクロン株に対するワクチンの入院予防効果】
A.2回接種の場合:ファイザー社製、モデルナ社製共に投与後25週時点で25%程度 B.3回接種の場合:アストラゼネカ社製2回接種後、3回目接種をファイザー社製、モデルナ社製にした時の入院予防効果は90%近くまで上昇し、投与後10-14週時点で75%を維持するといわれています。
発症予防効果、入院予防効果共に3回接種することで効果があることから、現在、3回目接種が始まっています。
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次回も新型コロナウイルス感染症についてお話します。
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