今回は特に全国で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症のオミクロン株について、厚生労働省、国立感染症研究所、日本感染症学会からの記事などを参考にしてお話します。
1.オミクロン株の別系統:BA.2
国内におけるオミクロン株は、当初BA.1とBA.1・1という株でしたが、別系統のBA.2系統が検出されており、4月中旬時点では、BA.2系統への置き換わりが進んでいます。国立感染症研究所の推計では4月第1週に全国感染者の6割、さらに5月1週目には9割、6月には100%置き換わるとされています。
BA.2系統はこれまでのオミクロン株よりも感染力が1・2~1・4倍程度強いといわれています。また、感染者が別の人に感染させるまでの期間「世代時間」が短いことも特徴で、約15%短いと推計されています。感染が拡大すればこれまで以上のスピードで波が大きくなる恐れがあります。BA.2系統に対する新型コロナウイルスワクチンは、これまでの株と同様に重症化、入院率の低下に効果があることが統計上、わかっていますので、若い年代の3回目のワクチン接種が急がれます。
原稿を書いている4月は、まんえん防止等重点措置がすでに解除となっており、リバウンドが危惧されるほか、会社での歓迎会、お花見、新学期の学校行事での感染が危惧されますので、さらなる注意が必要になります。
一方、オミクロン株BA.1・1やBA.2もデルタ株に比較して炎症が肺に及ぶ可能性が低く、重症化しにくいことは確かなようで、季節性インフルエンザに徐々に近づいたとの報告もあります。政府内では4回目のワクチン接種についても検討が始まっています。しかし、外国のデータ、費用対効果、副反応、接種対象者など多角的な検討がおこなわれており、接種に対して慎重な意見も一部から出ているようです。
2.新型コロナウイルスの感染経路、感染予防について
ここで、最後にウイルスの感染経路について再確認を行います。人は、せき、くしゃみ、会話、歌、呼吸などの際に、鼻や口からさまざまな大きさや性状をもった粒子を空中に放出します。粒子はその大きさや含まれる液体の量によって空中での振る舞いが異なります。液体を含んだ大きな粒子は、放出されてから数秒から数分以内に落下しますが、小さな粒子や乾燥した粒子は、空中に数分から数時間にわたって浮遊します。従来、これらの粒子については大きさや性状に応じて飛沫やエアロゾルと呼ばれてきました。新型コロナウイルスは感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染します。その経路は主に3つあり、
① 空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染) ② ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染) ③ ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)。 実際にどの経路で感染するのかは、感染者から放出される感染性ウイルスを含む粒子の量や環境条件によって決まり、必ずしも1つであるとは限りません。感染者が呼吸をすると粒子が放出され、大きな声を出したり、歌ったりすると、放出される粒子の量が増えます。
また感染者との距離が近いほど(概ね1-2㍍以内)感染する可能性が高く、距離が遠いほど(概ね1-2㍍以上)感染する可能性は低くなります。特に換気が悪い環境や密集した室内では、感染者から放出された感染性ウイルスを含む粒子が空中に漂う時間が長く、また距離も長くなります。こうした環境に感染者が一定時間滞在することで、感染者との距離が遠いにもかかわらず感染が発生した事例が国内外で報告されています。
このように感染が起こりやすい環境条件をわかりやすく説明したものが、「3密」と呼ばれる概念です。
密閉:換気の悪い閉じられた環境 密集:狭い空間に多くの人が集まっている環境 密接:お互いの距離が近く、特に会話をしている環境
3つの条件に1つでも当てはまる環境に感染者と感受性者が滞在すると、感染が成立する可能性は高くなり、さらに3つの条件がそろうとより高くなります。感染予防のためには、3密を避け、換気、手洗い、マスク着用の基本的感染対策が重要であり、少しでも体調不良を感じたら、外出、移動を控えて、積極的に医療機関を受診、検査を受けることが大切になります。
◆ ◆ ◆
今回で新型コロナウイルス感染症についてのお話を終わり、次回からは以前お届けしていた脳卒中についての続きをお話します。
|