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【8月29日付編集日記】矢玉四郎さん

08/29 08:45

 ピカソの創作意欲は、四角いキャンバスに絵を描くという常識に収まらなかった。新聞や壁紙などを貼り付けたコラージュ作品を編み出し、人々を驚かせた

 ▼最初の作品では楕円(だえん)形の模造布に絵を描き、縁に縄を巻いた。意外な物を組み合わせることで浮かび上がるメッセージ。時にはピカソの想定を超える発見があっただろう(小川仁志「ピカソ思考」)

 ▼鉛筆が天ぷらになる、空からブタが降る―。児童書「はれときどきぶた」は、主人公が「あしたの日記」に書いたことが現実になる物語。約40年前の出版当初、面白いだけの話は児童文学ではないと批判されたが、読む楽しさが子どもたちに支持された

 ▼作者の矢玉四郎さんが亡くなった。久々に読み「ばかなこと」を考える大切さを説いた後書きに目が留まった。100くらい考えれば、1つはいいものがあるという。さらに、周りに流されず自分が感じていることを伝えるための頭の訓練になるとも

 ▼2学期が始まり憂鬱(ゆううつ)という子どもたちに、矢玉さんなら「あしたの日記を書こう」と勧めるはずだ。自分はこんなことが考えられるんだ、予想に反して楽しい一日だったぞ―。書くことで出会える意外性が、気持ちを晴れにする。

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