給付か減税かでは、その場しのぎの対応を決めるにとどまってしまう。国民が物価高を乗り越えるために国がすべきことは何かを見極めて票を投じたい。
共同通信が参院選公示後に行った世論調査によると、何を最も重視して投票するかの質問で最も多かったのは「物価高対策」で回答者の3割を占めた。続く「年金など社会保障」「子育て・少子化」などを大きく上回っている。
備蓄米の放出により低下傾向はみられるものの、コメの高騰は十分に緩和されたとはいえず、食料品全般の価格が上昇している。ガソリン価格の高止まりも続いている。有権者が物価高に強い関心を寄せるのは当然のことだ。
与党の自民、公明両党は現金給付を柱に据え、国民1人当たり2万円、子どもや住民税非課税世帯の大人には上乗せして4万円を給付するとしている。野党は消費税の税率の一時的な引き下げなどを掲げている。
野党の減税に関する公約では、食料品の消費税率について立憲民主党が来年4月から1年間0%、日本維新の会が2年間0%を掲げる。国民民主党や共産党は消費税率の5%への引き下げを訴える。れいわ新選組や参政党などが消費税の廃止を目指すとしている。
給付は減税に比べて実行までの時間が短くて済むものの、一時的な給付は消費よりも貯蓄に回りやすいことが分かっている。全世帯への給付となれば、費用に見合った効果が見込める施策とはいえまい。消費減税は法改正などで実行に時間がかかる。食料品などの減税は困窮層の支援にはなるものの、支出の多い比較的裕福な層の方がより恩恵を受ける。
各党は給付や消費減税による歳出入の増減への手当てについては、税収の上振れ分や法人税の引き上げ、国債発行などで賄うとしている。給付には数兆円の費用を要し、消費減税は数兆~数十兆円の歳入減となる。
与野党は互いの訴えについてばらまきと批判するが、双方がばらまきを競い合っているというのが実態だろう。国の負債が膨れ上がる中、将来への影響を軽視した訴えは無責任だ。
国が行うべきは、物価高に耐えられるよう、国民の収入の底上げを図ることに尽きる。各党は対症療法の訴えのみに注力していてはならない。それぞれが公約に掲げる経済成長に向けた政策をどう賃上げに結び付けるのか、賃上げの直接的な恩恵がない高齢層など、個別の救済をいかに充実させるのかをしっかりと語るべきだ。