本県を2024年に訪れた観光客は5757万3000人で、これまで最も多かった10年(5717万9000人)を上回り、過去最多となった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による大幅な落ち込みや、新型コロナウイルス禍を経て、震災前の水準まで戻した意義は極めて大きい。この数を基点として、観光客数の継続的な底上げを図っていくことが重要だ。
観光客数回復の原動力となっているのが道の駅で、観光客数の3割弱を占めている。今年新たに道の駅に登録されたいわき・ら・ら・ミュウを含めれば、入り込み数の上位10施設のうち半分が道の駅だった。最も多いのはふくしま(福島市)で169万2000人、伊達の郷りょうぜん(伊達市)、国見あつかしの郷(国見町)も150万人を超えた。震災以降に開業した施設が観光客を集めている。
県は、物産品の販売などに加えて、「各地の道の駅を巡るスタンプラリーなどが人気を集めていることが入り込みの増加につながっている」と分析する。今後の課題は、道の駅を訪れた人に周辺の観光地まで足を運んでもらうかだろう。道の駅から周遊を促すイベントや仕掛けについて、これまで以上に知恵を絞ってもらいたい。
来年4~6月にはJR主導の大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」を控える。今年の同時期に展開されたプレDCでは、大阪万博に観光客が流れた影響もあり、宿泊客数が伸びなかった。本県の観光産業の振興を図る上では各施設を訪れる人に加え、滞在時間が長く、消費額も多い。JRとの連携などを通じて、宿泊客をいかに増やすかを重視する必要がある。
県は宿泊客の増加に向け、補助金を設けるなどして事業者に夜間や早朝帯の観光企画の充実を促すことにしている。事業者にはDC後も見据え、継続して誘客につながる企画の創出が求められる。
本県はようやく震災前の入り込み数を取り戻したものの、隣県は震災前に比べ1割程度観光客を増やしている。これは外国人観光客の誘客の伸びが他県に比べて小さいことが要因だ。震災前の本県は韓国や中国からの観光客が多かったが、韓国については当時の1割以下に減り、中国も増加が鈍い。原発事故による風評の払拭が両国では十分ではないとみるべきだ。
海外に残る風評の克服は、県や県内の関係団体の取り組みだけでは限界がある。政府や復興庁が中国や韓国に対し、科学的な根拠に基づいて本県のイメージ回復を図っていくことが不可欠だ。