国民民主党が主張する「年収の壁」を巡り、政府は所得税や住民税の制度を見直すと地方自治体の減収が5兆円強に上ると試算する。地方の打撃が大きいのは、4兆円程度の住民税に加え、国税の所得税を原資とする1兆円強の地方交付税も失われるからだ。自治体関係者からは行政サービスの低下や財政悪化への懸念が高まっている。
国民民主は手取り収入増加を掲げ、所得税の基礎控除などを最低賃金の上昇率に合わせて、103万円から178万円にすべきだとしている。住民税の控除引き上げも「排除していない」(党関係者)との考えだ。
政府は仮に所得税と住民税の基礎控除を75万円ずつ引き上げた場合、国と地方で年間7兆~8兆円の減収になると見積もる。住民税はごみ処理や学校教育などの費用に充てられている。所得税の約3割は地方交付税として自治体に配分されている。全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事は減収が地方に及べば「大きく住民サービスが下がることになる」とくぎを刺す。