福島大共生システム理工学類の兼子伸吾准教授(分子生態学)は7日、放射線(ガンマ線)を照射した植物「シロイヌナズナ」の種子を栽培してゲノム解析し、DNA配列での突然変異の発生割合を調べた研究成果を発表した。毎時17ミリシーベルト(1万7000マイクロシーベルト)のガンマ線を2カ月間照射した場合でも突然変異の発生割合は5倍ほどで、兼子氏は「(原発事故に伴う)低線量では、植物の遺伝的影響が少ないのは間違いない」とした。
毎時17ミリシーベルトは、福島大のモニタリングポストで現在観測されている毎時0.1マイクロシーベルトの約17万倍に相当し、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の空間線量と比べても極めて高い。
兼子氏は植物の集団としての遺伝的影響が今後検出される可能性は低いとも指摘した。
兼子氏と同学類の平尾章客員准教授らでつくる研究グループが調査。実験に関するデータが多いモデル植物「シロイヌナズナ」を対象に、低線量(毎時1万7000マイクロシーベルト)、中線量(同5万8000マイクロシーベルト)、高線量(同8万3000マイクロシーベルト)に分けて照射した植物の種子を栽培してゲノム解析した。突然変異の発生割合は非照射に比べて低線量が5倍、中線量が7.7倍、高線量が14.4倍となった。確認された突然変異はDNA配列が変わることなどだった。
研究成果は国際学術誌「サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロメント」に発表した。