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【60年目のフラガール】生き抜く力、次世代に 震災の教訓伝える

07/04 11:30

子どもたちに震災の時の経験を語ったプアメリア真由さん(左)。迅速な避難の重要性を伝えた=4月22日、いわき市・藤原小

 「もう、ソロダンサーになれない」。2011年3月、当時フラガールのメンバーだった国井麻衣(37)は強い絶望感に襲われていた。東日本大震災でスパリゾートハワイアンズが休館を余儀なくされ、踊る場所を失った。

 いわき市出身の国井は子どもの頃から、次々と衣装を替えてステージに登場するフラガールに憧れていた。ソロダンサーになるのを夢見て、05年にフラガールになった。

 だが、同期が先にソロダンサーになり、何度も挫折を経験した。諦めず努力を続ける中で震災が発生。自宅待機中はどんどん暗い気持ちになっていった。

 そんな時始まったのが、フラガールが復興の願いを込めて全国を巡る「全国きずなキャラバン」だった。国井は東京都の新宿高島屋で行った最初の公演を「アンコールを受けてみんな涙を流しながら踊った。自分たちが勇気づけられた」と振り返る。ハワイアンズは同年10月から段階的に再開。翌12年、国井は念願のソロダンサーになった。

 フラガールは震災という苦難を乗り越え、活動の幅を大きく広げていった。

 「自分の命は自分で守る。約束してくれますか」。今年4月、ハワイアンズ近くの藤原小の体育館に、サブキャプテンのプアメリア真由の声が響いた。

 フラガールは本年度、県内の小学校を巡る出前授業「きずなスクール」に取り組んでいる。震災の経験などを話し、子どもたちに「生き抜く力」を伝える。

 真由はいわき市出身。震災発生時は小学5年生で、卒業式の会場設営のため体育館にいた時に激しい揺れに襲われた。パニック状態になり座り込む児童もいたが、現場にいた教員の誘導で屋外に避難。その直後、真由らがいた場所に体育館の天井から照明が落下した。迅速な避難で難を逃れた。

 避難の重要性を伝えた真由は「この仕事をしているからこそ、経験を多くの人に伝えることができている」と充実感をにじませる。

 現在は新人フラガールの指導を担当する国井は、現メンバーが担う新たな役割についてこう語った。「今の活動を見て憧れを持ち、フラガールを志す人もいるだろう。みんなが今やっていることは将来のメンバーを育てることにつながっている」(文中敬称略)

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