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奈良時代の水場遺構発見 福島・西久保遺跡、祭祀に使用か

07/28 10:20

発見された奈良時代の水場遺構。左側にある木組みの井戸枠状の遺構から右側にかけて段状になっている。白色の紙がある場所は木簡の出土地点=西久保遺跡

 福島県福島市平石の西久保遺跡から、奈良時代に利用されていた水場の遺構が発見された。井戸枠を木組みにしたり、段差をつけたりした複雑な構造で、市によると、奈良時代のこうした構造の水場遺構が見つかったのは東北初。全国的にみても類例がなく貴重な遺構で、水場は祭祀(さいし)や儀式で使われていた可能性が高いという。これは遺跡が一般的な村落ではなく、役所のような機能を持つ場所だったとの推察をより裏付けた形だ。

 市が27日に開いた現地説明会で明らかにした。水場遺構は「鎮兵(ちんぺい)」(東北地方に派遣された兵士)、「郡司」(地元の有力者)と書かれた二つの木簡が出土した場所を掘り進める過程で見つかった。1月ごろから順次、木簡の出土地点から1メートルほどの場所に、丸太をくりぬいた井戸枠状の遺構や石組みの護岸施設、板状の木製品などが確認された。

 市によると、水場遺構は、石組みだけでなく木組みを用いている点や、井戸枠までの間に3段の段差をつけて立体的な構造になっている点が特徴という。生活用水として日常的に使う水場はこうした構造にする必要がないため、水が枯渇しないよう行う祭祀などで使われていたと推察される。

 遺跡ではこれまで、二つの木簡のほか、今回見つかった水場遺構を挟む形で、役所機能を持つとみられる大型の建物の跡が見つかっている。一方、奈良時代に一般の人が住んでいた竪穴住居の跡は少なく、市の担当者は「全容はまだ分からないが、役所的な意味合いのある場所だった可能性が高い」(文化振興課)としており、水場遺構についての調査も進めていく方針だ。

 西久保遺跡 福島市平石の東北道近くにある奈良―平安時代の遺跡。国道13号バイパス「福島西道路」の改築事業に伴い発掘調査が行われている。「鎮兵」木簡は昨年8月、「郡司」木簡は今年1月に出土した。ほかに奈良―平安時代ごろの竪穴建物跡や掘立柱建物跡、土坑、溝跡などが見つかっており、土師(はじ)器や須恵器、中世陶器、金属器なども出土している。

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