• X
  • facebook
  • line

トクリュウ首謀者逮捕 詐欺未遂疑い、被災地で屋根修理名目

07/12 07:30

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で被災した南相馬市など沿岸部の住宅を訪問し、屋根の修理代名目で現金をだまし取ろうとしたとして、相馬署などは11日午前9時半、詐欺未遂の疑いで埼玉県新座市、会社役員の男(23)を逮捕した。同署は男が交流サイト(SNS)などでつながり活動する「匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)」のリーダーとみて、組織の実態解明を急いでいる。

 県警組織犯罪対策課によると、男が経営するリフォーム業「アップルホーム」(新座市)を巡り、県警に寄せられた同様の手口の被害申告や相談は4月以降で50件以上に上っており、特に5月の大型連休後に急増。南相馬市をはじめ相双や県北など広範囲に及ぶという。そのうち、少なくとも3、4件は同社が必要のない修理を行い、修理代として住民が現金を支払ったケースもあるとみられ、県警は不正に得た利益の一部が暴力団などに流れていなかったかも含めて調べる。

 逮捕容疑は5月下旬、何者かと共謀し、南相馬市の40代男性宅を訪れ、男性に「木が腐っている」「今のうちに修理した方がいい」などとうそをつき、屋根の修理代名目で147万4千円をだまし取ろうとした疑い。

 同課によると、男は「うそはついていない」などと容疑を否認。男性は地元業者に屋根の点検を受け、工事は必要ないと言われたため南相馬署に相談し、被害を免れた。

 捜査関係者によると、男らは複数人でグループを組み、今年4月以降、南相馬市などを中心に住宅を訪問。同市の宿泊施設に泊まりながら、首都圏ナンバーの車を使って住宅訪問を繰り返していたとみられる。男性方を訪れた際、男は作業着姿でアップルホームの工事部長最高責任者という肩書に加え、「水瀬泉」という偽名が書かれた名刺を住民に渡していた。他の家にも「水瀬泉」という名前で訪問していたとみられる。

 男は昨年、同様の手口で行政処分などを受けた埼玉県の会社の関係者。県警は、男が同社で得たノウハウを使い、仲間を募った上で本県でも同じ手口を繰り返していたとみている。

 同署は組織犯罪対策課、生活環境課、南相馬署、双葉署と合同捜査班として捜査した。

 同じ社名の会社にも影響

 男が社長を務める会社と同じ社名の埼玉県の別の会社にも影響が及んでいる。

 同県狭山市を中心に住宅販売などを手がける「アップルホーム」の担当者によると、今年5~6月、営業エリア外の東北地方の人から「アップルホームの社員から高額な値段で屋根の修理を勧められた」などの相談が複数件寄せられた。社員を名乗る人物は「屋根に穴が開いているからリフォームした方が良い」などと説明。通常10万~20万円で済む工事に80万~100万円の高額な費用を請求されたケースもあったという。

 また、同社の営業エリアでも同様の相談が寄せられている。同社は今春ごろ、「弊社名をかたる悪質なリフォーム業者の被害が報告されている」とする注意書きをホームページに掲載した。担当者は「お客さまに不安を与える業者が逮捕され、ほっとしている」と話した。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line