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戻った観客と歓声 パリ興奮「立ち会えて最高」 開会式ルポ

07/28 09:05

日本選手団の一員として国旗を手に開会式に臨んだ大堀彩=26日、パリ(佐藤智哉撮影)

 【パリ=報道部・佐藤智哉】セーヌ川で26日夜(日本時間27日未明)に行われたパリ五輪の開会式では、入場行進の代わりに、選手が船に乗ってパレードした。川岸に駆け付けた観客は選手が通るたびに自国の国旗を掲げ、声を上げて力強いエールを送った。新型コロナウイルス禍の2021年東京五輪では実現しなかった姿がそこにはあった。

 スタートのオステルリッツ橋からイエナ橋まで約6キロを選手は船で進んだ。記者はこの中間地点にあるシャンジュ橋から取材した。

 観客席は川岸と橋の上に設けられ、各国・地域の選手たちを乗せた船が続々と川を下った。日本選手団の船には女子バドミントンの大堀彩(トナミ運輸、富岡高卒)の姿もあり、声援に応えるように手や国旗を振り、初めて味わう五輪の雰囲気を楽しんでいた。

 開会式がスタートしてすぐに小雨が降り出し、雨脚はどんどん強まった。だが観客にとって悪天候は関係なかったようだ。傘を忘れ、シャツが体に張り付くぐらいぬれようがその場を離れることなく、選手を乗せた船を見届ける姿があった。

 最後にフランス代表の船が通ると、観衆はこの日一番の盛り上がりを見せ、スマートフォンを片手に手を振り、選手に向かって「ウォー」と叫んでいた。85隻の船が全て通過するまでの約2時間、会場はお祭り騒ぎで、パリ市在住のフランス人男性(48)は「各国・地域の選手を間近で見られた。この場に立ち会えて最高だ」と興奮した様子だった。

 「平和の祭典」の華々しい幕開けの一方、開会式当日の朝には高速鉄道(TGV)を狙った放火事件が起きた。会場周辺は厳戒態勢が敷かれ、ライフルを持った警察官が警備に当たっていた。記者が開会式会場に入るまでには、テロ対策のため、取材証やパスポートなど4種類の証明書を提出する必要があり、会場の外は物々しい雰囲気だった。

 開会式を訪れたフランス人女性(50)は「平和の祭典で民間人が危険にさらされてはいけない。安全に大会が終わることを願っている」と語った。

 コロナ禍で大半の競技が無観客開催となった東京五輪から3年。今大会は海外から多くの来場者が見込まれるが、この現地の盛り上がりに水を差すようなことは、絶対に起こってほしくない―。強くそう思った。

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