デジタル数字の作品で知られる、日本を代表する現代美術家の宮島達男さん(67)=茨城県=が、東日本大震災の犠牲者の鎮魂と、記憶の継承、東北の未来づくりに向けて取り組む「時の海―東北」プロジェクトの作品を恒久設置する美術館を福島県の浜通りに建設することが11日、分かった。場所は現時点で非公表だが海沿いで、来年ごろから建設し2027年の完成を目指す。
宮島さんの作品は発光ダイオード(LED)のデジタルカウンターを使用し、9から1までの数字がさまざまな速度で点滅する表現方法が代表的だ。同プロジェクトは、LEDカウンターを3千個使う巨大なアート作品。東北に生きる人や思いを寄せる人3千人と協働で制作する計画で、全国各地でワークショップを展開し、現在は約2500人超が参加している。
震災時、宮島さんは東北芸術工科大(山形市)の副学長。目の当たりにした被災地の光景に一時は制作活動ができないほどショックを受けた。だが数年で風化が進む現状に危機感を持ち、15年から同プロジェクトを始めた。「3千人の思いの塊を作品にし、命に向き合い、経験と記憶を継承し、未来を考える場にしたい」
美術館にはコミュニティースペースも併設する。宮島さんは「訪れた人が作品や海を眺めて、震災当時や大事な人を思い出すゆったりとした時間を過ごしてもらいたい。そして東北の営みや風景に出合う入り口にしたい」と展望を語った。
「時の海―東北」の新たな活動拠点「富岡町オフィス」(富岡町小浜字中央272)が開室される。13日午後4時~同8時は一般向けに開放し、宮島さんのトークイベントなどを行う。