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旅先バイト…熱視線 マッチングサービス、浪江や昭和に幅広い世代

07/17 09:30

志賀社長(左)からホテルの清掃を教わる旅行者の高橋博康さん(中央)と亜衣さん=浪江町・ホテル「やすらぎの宿ホテル双葉の杜」

 旅行と短期アルバイトのマッチングサービス「おてつたび」が注目を集めている。働きながら旅を楽しみたい人や、人手不足の事業所を中心に利用が増えており、県内では旅館や農家などがマッチングの場となっている。旅行者には賃金のほかに無料宿泊などの特典があり、事業者側は人件費の削減にもつながる仕組みだ。地域の新たな魅力を発見したり、発信したりできるサービスとして期待が高まっている。

 バサッバサッ―。浪江町のホテル「やすらぎの宿ホテル双葉の杜」で客室のシーツを張り直したり、枕の位置を整えたりしていたのは、秋田市在住のユーチューバー高橋博康さん(35)と妻亜衣さん(35)の2人だ。「おてつたび」を通じて訪れていた。

 「おてつたびは全国各地、さまざまな場所に足を運び、その地域と深く関わりを持つことができる」。そう魅力を語った2人は「原発について身近に触れる機会がなかったので学びたい」と、東京電力福島第1原発事故の避難区域を巡るため利用した。

 ホテルを運営するフタバ・ライフサポートの志賀祟社長(51)は「繁忙期など、マンパワーが必要な時は柔軟に採用を増やすこともできる」とメリットを挙げる。プライベートで遊びに来てくれたこともあるといい「おてつたびをきっかけに、町に住みたいという人がいたらうれしい」と笑顔を見せた。

 昭和村の温泉施設「しらかば荘」では、2週間に1人の頻度で利用者を受け入れる。担当者は「移住はハードルが高いが、おてつたびは利用しやすいのだと思う。求人広告を出す経費の削減にもつながっている」とメリットを口にした。

 サービスを展開するベンチャー企業おてつたび(東京都)の園田稚彩(ちさ)さん(29)によると、創業当初は学生など若者の登録者が多かったが、現在は主婦や早期退職した人など幅広い年代が利用しているという。園田さんは「地域の事業者にこの取り組みを知ってもらい、さらに広めていきたい」と力を込める。

 活用増へ県も支援

 県などもおてつたびを注目している。県南地方振興局は「しらかわ”ならでは”ツーリズム」と銘打ち、事業所側の補助金を用意した。1団体当たり5万円を上限に利用者の保険費用などを支援する。

 同振興局の喜古正人さん(40)は「県外の若者に来てもらうきっかけになる。地場の魅力を感じてもらい、継続的に関わりを持ってもらえるようにしていきたい」と話した。(伊藤大樹、鹿岡将司)

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 おてつたび 旅行者は行きたい日や地域から選んで応募する。期間は2、3日~2週間程度。マッチングが成立した場合、求人を出した事業者側のみがマッチング料を支払う。サイトの登録は事業者、旅行者のいずれも無料。登録旅行者数は5万5000人を超えている。全国約1400事業者が受け入れを募集していて、このうち県内は約40事業者が登録している。


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