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【新まち食堂物語】伊達の釜めし・伊達市 具材引き立つ秘伝だれ

07/28 10:00

  • 動画付き
「伊達に来たら釜飯を食べてちょうだい」と笑顔で呼びかける菅野さん(石井裕貴撮影)
中トロ丼と伊達鶏五目釜飯

 車が多く行き交う伊達市岡前の国道4号の西側。市街地に入ると「伊達の釜めし」の黄色いのぼり旗が出迎えてくれる。菅野正彦さん(77)が切り盛りする「伊達の釜めし」は、地元の常連客だけでなく、県外からの客にも親しまれている。

 本県を代表する三大ブランド鶏の一つ「伊達鶏」を使った人気商品の伊達鶏五目や、ウナギの半身を使ったうなぎ釜飯、柔らかい相馬産のホッキ貝を使った釜飯と、その数は12種類。「『番々のうなぎを食べないと栄養失調になる』と毎年来る人もいる」と菅野さんは気さくに話す。中トロ丼などの海鮮料理も来店者をとりこにする一品だ。

 そろばんが好きだった菅野さんは高校時代にそろばん検定1級を取得。1967年ごろに旧伊達町のそろばん教室に勤務した。勤めて20年以上が過ぎたころ、通っていたスナックの店員が居酒屋の借り主を探しているという話を聞き、知人からの応援を受けて91年に旧保原町上保原で居酒屋「カラオケ番々」を始めた。

 夜は居酒屋営業

 しかし、ひょんなことから始めた飲食店は簡単なものではなかった。「最初の1年は緊張しっぱなし。人の前に立つのも駄目だった」と明かす。酎ハイの調合を誤ったり、料理に塩を入れすぎたりする失敗もあったが、友人に支えられながら続けた。自らも岩手県の海鮮物などを食べ歩き、研究した。近所のスーパーの鮮魚コーナーで魚のさばき方を見よう見まねで学んだ時には、料理長から刺し身包丁をプレゼントされた。

 2005年に昼の営業を始めると、当時珍しかった釜飯を開始した。07年に現店舗に引っ越した後も、要望に応じて少しずつメニューを増やした。現在は昼の営業に加え、夜間は「海鮮小料理居酒屋 番々」の名で営業する。

 釜飯料理は短時間で出来上がるのが売りだ。炊飯器で炊くと50分ほどかかるが、厚釜のおかげで30分以内で完成する。ふたを開けると、立ち上る湯気と香ばしい香りが食欲をかき立てる。7年の時間をかけて試行錯誤の末に完成した秘伝のたれで味付けしたご飯は、さまざまな具材によく合う。

 釜飯文化つくる

 飲食店とそろばん教室を同時に30年以上営む菅野さんは、伊達、桑折の2市町で小中学生にそろばんなどを教えている。店にはかつての教え子が子どもを連れて食べに来てくれたり、営業を手伝ってくれたりする。そろばん教室に通う子どもには無料で食事を提供しており「5、6年生の子はよく食べる」とうれしそうに話す。店の釜飯や海鮮丼は子どもたちにも人気で、教室に通う小学5年生の女子児童は「検定合格のお祝いにおじいちゃんに連れて来てもらった。カニの釜飯がおいしくて、次も頑張ろうと思う」と満面の笑みを浮かべる。

 「『伊達といったら釜飯』と言われるような文化をつくりたい。この店以外にも釜飯の店が増えたらいい。伊達に来たら釜飯を食べてちょうだい」。菅野さんは今日も「伊達な釜飯」を人々に届けている。(小幡あみ)

お店データ

■住所 伊達市岡前29の1

■電話 0120・63・7167

■営業時間 昼の部=午前11時半~午後2時▽夜の部=午後6時半~午前0時(土、日曜日は午後6時~午前0時)

■定休日 昼の部=毎月2日、月曜日▽夜の部=月、水曜日

■主なメニュー
(いずれもお新香とみそ汁付)
▽伊達鶏五目釜飯=1350円
▽うなぎ釜飯=2200円
▽相馬産ほっき釜飯=1450円
▽山菜きのこ釜飯=600円

▽中トロ丼=1680円

 釜を無料貸し出し

 自宅でも釜飯の雰囲気を楽しめるようにと、釜を無料で貸し出している。店のホームページの釜飯通販では、伊達鶏五目やうなぎ、山菜きのこなどを取り扱う。味付けされた専用の早炊き米で、ふっくらした釜飯が味わえる。羽釜やかまどなどの本格釜セットも販売している。

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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