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漫画家ややまひろしさん死去、91歳 福島民友で「ろう漫日記」執筆

08/01 08:35

本紙の連載「ややまひろしのろう漫日記」などを執筆したややまさん=2023年
2013年1月1日付の本紙の特集「福島に贈る言葉」に掲載されたややまさんの作品

 味のある1こま漫画や、福島民友連載「ろう漫日記」などの軽妙なエッセーなどで知られる漫画家で文筆家の、ややまひろし(本名屋山弘)さんが7月30日午前3時40分ごろ、腎不全のため福島市黒岩の自宅で死去した。91歳。福島市出身。通夜は1日午後5時、告別式は2日正午から福島市黒岩のたまのやこころ斎苑黒岩南で。喪主は次女みゆきさんの夫加藤宏(かとう・ひろし)さん。

 福島商高卒業後、旧中合百貨店(福島市)勤務の傍ら、本紙など新聞への投稿で漫画の腕を磨いた。1984~93年には本紙「リレー時評」欄を執筆者の一人として担当、世相を風刺した1こま漫画で人気を博した。また日本漫画家協会の東北支部設立に参加、40年以上同支部長を務めた。

 85年に始まった本紙主催の「民友マンガ大賞」ではスタートから36年間、審査委員長を務め、県内漫画文化の進展に情熱を注いだ。

 2014年9月に本紙シニア面で始まった月1連載「ろう漫日記」でも今年6月まで10年以上休みなく健筆を振るった。

 出版した挿絵付きエッセーは20冊に上る。郷土史や地元で活躍する人たちをユーモアたっぷりに紹介する作品が支持された。

 多才ぶりは演芸の分野にも及び、1992年には友人らとうつくしま芸人会を設立。初代会長を務め鶴亭漫太郎の芸名で高座に上がった。こうした多くの功績から昨年みんゆう県民大賞芸術文化賞を受賞した。

 日本漫画家協会東北ブロック長の一ノ瀬善正さん(71)=会津若松市=は「とにかく多才な人だった。私たち民友マンガ大賞の入選常連を漫画家協会に積極的に勧誘したのも、ややまさん」と漫画への情熱を振り返った。

 【悼む】 人柄の良さ、作品に

 「面倒見がよく優しい人だった。そして多芸でインテリ」。東京から福島市に35年ほど前移住した画家和田恵秀さん(84)は、同市でややまさんと出会い、最近まで自宅を訪れ世間話に花を咲かせる仲だった。

 和田さんの父は漫画家の和田義三さん。ややまさんにとって憧れの作家だった。そんな縁で、東日本大震災後は旧中合で似顔絵を描くチャリティーイベントを一緒に行った。

 ややまさんの漫画は「のんびりした線で描かれているのが特徴。似顔絵や政治漫画、社会風刺など、どんなテーマで描いても角が立たない。人柄が表れた作品ばかり」と評する。

 うつくしま芸人会の会長をややまさんから引き継いだ小橋伸一さん(68)=福島市=も「ひょうひょうとして力まないのにウケた」と芸人としての非凡さを語るが「実は努力していた」。

 「大病で入院した時、もう落語は無理だと思った。ところが入院前より芸が面白くなった。不死鳥だった」。人生を走りきった才人を語る言葉は尽きない。(深谷宏子、鈴木博幸)

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