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帰還後も抑うつ改善せず、震災後の心理的影響続く 福島大調査

08/08 10:30

 福島大災害心理研究所は7日、東京電力福島第1原発事故から12年後の住民の心理的影響について、事故当時の居住地別に調査した結果、避難指示区域に住んでいた人に抑うつやストレスなどの症状が強く見られたと明らかにした。事故から12年が経過した時点でも影響が続いていることが浮き彫りになったほか、避難指示の解除に伴う帰還が必ずしも精神的健康の向上につながらない可能性も示された。

 筒井雄二所長(共生システム理工学類教授)が定例記者会見で発表した。〈1〉避難指示が出た浪江町の住民〈2〉避難区域以外の県内在住者〈3〉県外在住者の計2779人を対象に、抑うつ反応や幸福感、放射線健康不安などを測る4種類の心理尺度を用いて分析した。このうち世界保健機関(WHO)が推奨する指標に基づく精神的健康度の分析結果は【グラフ】の通り。数値が低いほど悪いとされる指標で、浪江町は最も低く、県内、他県の順に高くなった。浪江町について現在の居住地別に分類すると、帰還した人に比較的低い傾向が見られた。

 ほかの尺度調査でも同様の傾向が見られ、筒井氏は「避難地域に居住していた人は12年が経過した現在も他県と比べて高い抑うつやストレスなどの精神症状、放射線不安が続いている。避難指示が出ていない県内の居住者にも心理的影響が見られた」と分析。「被災地の復興や新たな環境整備が進められるが、事故の被災者の心理的な問題は現在も続いている」と指摘した。

 研究所は今秋にも再度、調査を実施。継続的に分析を重ねた上で、今後必要な対応を提示していく。

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