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国連の人材育成機関、いわきに新拠点 11月にも、課題解決へ講座開設

08/08 12:35

 国連の人材育成機関「国連訓練調査研究所(国連ユニタール)」は11月にも、「地域リーダー国際研修センター(CIFAL=シファール)」の拠点を福島県いわき市に開設する。シファールは世界各国に拠点を置くネットワーク組織で、いわきは日本で初めて、世界で32カ所目の拠点となる。市内外から人材を集め、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興という地域特有の課題や、地方都市の人口減少など普遍的な課題の解決に当たるリーダーを育成する。

 拠点は「シファール・ジャパン」という名称で、運営は同市と学校法人昌平黌が担い、双方に事務局を置く。内田広之市長が初代所長を務める。内田市長と昌平黌の緑川浩司理事長が7日、国連ユニタール総代表・国連事務次長補のニキル・セス氏と基本協力合意書を結んだ。運営体制などについて協議した上で、11月中旬に正式な協定を締結する予定。

 元国連大使の星野俊也氏の妻の千華子氏が昌平黌が運営する東日本国際大の客員教授を務めていることなどがきっかけで、国連側から震災と原発事故の複合災害という他地域にない課題を抱えたいわきに拠点を開設したいと打診があったという。

 シファールのネットワークを形成する各国の拠点は、それぞれ国連の認証基準を満たした質の高い教育プログラム(講座)を開設している。主な拠点の代表的な講座のテーマは【表】の通り。それぞれの地域特有の課題に対応できるリーダーの育成を目指している。

 いわき市では10件程度の講座を開設し、市内外の若者や市内の企業の人材など年間2千人程度の受講を目指す。今後、地域の特性を踏まえた講座の開設に向けて調査研究に着手する。復興に関係する講座では、原子力の専門家など外部講師を招くことも検討する。国連職員や国際系企業勤務を目指す若者向けの講座の開設や、他の拠点の講座のオンライン受講も想定している。

 市は人材育成を通じて、若者世代の人口流出に歯止めをかけたい考えだ。新たな雇用の場を創出することも視野に入れている。

 星野氏が所属する大阪大で7日、基本協力合意書の締結式が行われた。内田市長は「全国に先駆けた国際都市を目指す」、緑川理事長は「福島からグローバル人材を育てる」とそれぞれ意欲を語った。セス氏は「災害からの復興に取り組んでいるいわきにシファールができることは大きな意義がある」と話した。国連ユニタールグローバル・ネットワーク部長のアレックス・メヒア氏も締結式に臨んだ。

 国連訓練調査研究所(国連ユニタール) 国連機関の一つで本部はスイス・ジュネーブ。1963年設立。より良い未来に向けた意思決定や行動をリードする人材の育成を担当。持続可能な開発目標(SDGs)の実現を目指して事業を進め、国連加盟国の外交官や国連スタッフの人材育成も担う。

 地域リーダー国際研修センター(CIFAL=シファール) 国連ユニタールが世界各地の都市など受け皿機関と共同で構築する世界的ネットワーク。行政や市民社会のリーダーを育成するための講座などのイベントを開催する。昨年は世界で422のイベントを開き、約9万7400人が参加した。

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