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35歳窪木一茂、駆け抜けた 自転車マディソン、一時メダル争い

08/12 08:30

窪木一茂
配信を見ながら窪木に声援を送った町民ら=11日午前1時10分ごろ、古殿町

 【パリ=報道部・佐藤智哉】「中距離で世界と戦えることを証明できた」。パリ五輪自転車トラックの男子マディソンで6位入賞したブリヂストン所属の窪木一茂(35)=学法石川高卒、今村駿介(26)組は一時、3位に浮上し、メダル争いを繰り広げた。窪木はオムニアムに続く中距離2種目で入賞する日本勢初の歴史もつくり、新時代の扉を開いた。

 250メートルトラックを200周走り、10周ごとに上位4チームにポイントが与えられるマディソン。窪木らの戦略は見事にはまった。「ほかのチームが序盤に勝負するなら、後ろで見ていく作戦だった。他チームがきつそうだったのでアタックした」。窪木は残り90周を切ってから仕掛け、一時は3位に躍り出た。

 8年前のリオデジャネイロ五輪ではオムニアムで14位に終わり「全然歯が立たなかった」。五輪で力を出し切る難しさを痛感したからこそ、誰よりも日の丸を背負う覚悟を持ち、鍛錬を重ねてきた。

 ロードレースのプロチームに入るために2016年には渡欧。18年にトラックで世界を目指して日本に戻り、ブリヂストンチームに加入した。21年東京五輪を逃すと、短距離の競輪にも挑戦し、短中長距離を網羅。「僕より自転車のことを知っている選手はいない」。経験と実績が語らせる確かな自信が、飛躍へと導いた。

 「日本がメダルを取るのは奇跡に近いとコーチに言われていたが、本当に奇跡を起こすような走りができた」。高校時代に「JAPAN」のジャージーに憧れ、自転車を始めた少年が日本のエースとして五輪を駆け抜けた。

 父「夢見せてもらった」

 競技会場では父茂さん(71)ら親族12人が必勝の鉢巻きを頭に巻いて、窪木の勇姿を見守った。茂さんは「本当にメダルが見えたレースで、夢を見せてもらった。親として、ここまで連れてきてもらって、ありがとうの言葉しかない」と万感の思いを口にした。

 古殿町の居酒屋はやしでは、町民らがインターネット配信で窪木の走りを見届けた。

 窪木と同じ学法石川高自転車競技部出身で会社員の緑川竣一さん(32)は「攻める姿勢に感動をもらった。お疲れさまでした」と話した。

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