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【環境考察/農業新時代】変化適応は自分ごと、国も消費者もみんなで行動

09/09 07:10

いしだ・かずきいしだ・かずき 会津若松市出身。東京大大学院農学生命科学研究科博士課程後、2013年に農林中金総合研究所入社。

 地球温暖化など、農業を取り巻く環境が変わりつつある。農業政策に詳しい農林中金総合研究所(東京都)の石田一喜主事研究員(39)=会津若松市出身=は「今後、環境が変化していくのは確実。変化に適応していくことが必要だ」と訴える。

 異常ともいえる高温だった昨年に続き、今年も暑い日が続く。懸念されるのは、コメ作りへの影響だ。石田氏は「これまで『おいしい』といわれてきた有名な産地ほど、その印象が変わりかねない大きな課題」と危機感を口にする。

 コメの高温対策は各地で進む。「ノウハウの蓄積をしていくべきだ」と考える石田氏にとって「(農業者への聞き取りや識者らによる研究会の設置など)山形県や新潟県のように、現場のノウハウとその効果を収集する取り組みが大事」とする。高温耐性品種については「生産だけでなく、販売を含めて考えないと普及は難しい」と話す。

 産地維持早めに

 コメに限らず、果樹や野菜なども「適地適作で作ってきたが、産地が北に移動していくこともあり得る」とみる。そのため「産地の維持を目指すのであれば適応策を早めに考えないといけない」と強調する。

 日本の温室効果ガス排出量のうち、農林水産分野は約4%とされる。温暖化を緩和していくには「できる限り温室効果ガスを減らしていく必要が出てくるだろう」と石田氏。ただ、農業者にとって収量や収益の確保は必要だ。「経営上のメリットが見えにくい」との指摘もあり、さらなる研究が求められる。

 不耕起栽培が注目されるなど「農業の基本でもある土作りの重要性が見直されてきている」とし「福島県をはじめ、先行する地域でノウハウを蓄積していってほしい」と述べた。

 価格高騰も課題

 温暖化に加え、資材や飼料価格の高騰も経営課題となっている。「大きな産地ほど、変わらないといけないという意識が高まっている」とした上で「一過性と捉えるのではなく、積極的に動くことが重要。地域ごとに適応策を考えていってほしい」と続けた。

 食料は人が生活する上で欠くことはできない。農業を巡る環境の変化について、石田氏はこう考える。「国や自治体、企業、生産者、消費者など、みんなで行動していくべき課題。自分ごととして考えることが必要ではないか」第4部おわり

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 この連載は中島和哉が担当しました。

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