「企業の意のままに操られてしまう恐れがあった」。国見町が設置した町事務執行適正化第三者委員会は13日、町が民間企業と共同開発した高規格救急車を貸し出す事業を断念したことを巡り、組織内で十分な準備や検証もないまま実行へ突き進んだ町の姿勢を批判した。
事業を受託した備蓄食品開発のワンテーブル(宮城県多賀城市)が町政に深く関わっていた実態がうかがえた。報告書では、専門性が求められる事業に挑むにもかかわらず町役場内で組織的に対応していなかったと指摘した。
同社と調整する職員や救急車開発委託の仕様書を作成した職員が一部に限られたため、ノウハウのある同社から助言を受けざるを得ない状況に陥った。重要施策なのに、町幹部による庁議に付議されず、基本方針を協議していなかった。
一方、チェック機能を果たすべき町議会や監査委員の対応も不十分だったと強調。事業の原資に企業版ふるさと納税の寄付金を充て町の財政支出が抑えられることを背景に、町議会で同社が関与する事業計画の不備を指摘せず、予算を可決したことを問題視した。
第三者委は再発防止策として、町役場内に特別委員会を設置し、チームとして継続的に対応するべきだと提言。最先端事業に取り組む場合、専門知識があるアドバイザーを適切に利用したり、住民代表や有識者ら第三者の監視の目を取り入れたりするべきだとした。
鈴木靖裕委員長(県弁護士会長)は記者会見で「企業版ふるさと納税への理解や最先端事業など内容に切り口を入れる存在がいなかった。(事業者に)スムーズに丸め込まれない体制を整えるべきだ」と述べた。
引地町長の判断注目
町が設けた第三者委員会と、町議会が地方自治法100条に基づき設置した調査特別委員会(百条委員会)の調査結果が出そろったことで、問題の外部検証は区切りが付いた。引地真町長は13日、報道陣の取材に応じず、町のホームページでコメントを出したのみ。今後の対応に関し「決定次第速やかに会見する予定」としており、百条委が引地町長の政治的責任を求めた中でどのような判断を示すかが焦点となる。
第三者委と百条委がそれぞれまとめた調査報告書では、高規格救急車事業の公募型プロポーザル(技術提案)期間の短さや公募前に一部の事業者に実施要領案を開示したことなど共通の問題点を挙げた。ただ、百条委はワンテーブルの島田昌幸元社長など外部の関係者に証人喚問を行ったが、第三者委は町職員への聞き取り調査にとどまった。
委員2人が辞任
第三者委員会は2023年6月、鈴木氏を含む委員3人で発足したが、残り2人が一身上の都合を理由に同9月に辞任するなど運営が一時混乱した。同12月に後任の2人を委嘱し、計13回の審議を経て調査結果をまとめた。第三者委の調査報告書は町ホームページに公開された。