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銅版画にフラの息遣い 元常磐興産社長、意欲的に創作 11月都内で個展

09/25 09:20

フラガールをモチーフにした作品を生み出す井上さん。「いわき応援大使としていわきに関心を持っていただければ」と語る
井上さんの作品「Beyond the reef(ビヨンド・ザ・リーフ、珊瑚礁の彼方へ)」

 銅版画で刷られた作品からは、「フラガール」たちの息遣いが聞こえてくる。銅版画の創作活動に取り組む元いわき観光まちづくりビューロー会長の井上直美さん(73)=東京都=は11月下旬、7年ぶりの個展を都内で開く。「来場者に少しでもいわき市や福島県に関心を持ってもらえれば」と心待ちにしている。

 浜口陽三氏に憧れ

 銅版画との出合いは、半世紀以上前のこと。大学浪人時代、絵の技法書で版画家浜口陽三氏の作品に魅せられた。予備校があった神田の画材屋で画材を購入、古本屋で専門誌を仕入れ、独学で技術を身に付けた。

 幼い頃から絵が好きだった。高校時代には芸大を志したが金銭的な事情で断念した。「きっぱりと諦めたつもりだったんだけど。未練があったから(銅版画と)一緒にここまで来たんだろうな」。古希を過ぎても制作意欲は衰え知らずだ。

 長く金融業界に身を置いた。「人との折衝が多くて(人間は)描く気が起きなかった」と言うように、当初の創作活動は風景画がメインだった。転機は2013年の常磐興産社長就任時。東日本大震災直後で業績が落ち込む中、歌舞伎役者の版画のようにスパリゾートハワイアンズのダンシングチーム「フラガール」をブロマイドとして売り出せないかと思案した。

 当時、人物画は不得手だったが、解剖図や筋肉図、骨格図を見ては体の構造を学習。手などのデッサンを繰り返し「やっと本物っぽくなった」と”修行”の日々を懐かしむ。フラガールがテーマの作品は全国公募展「春陽展」で本年度まで4回連続で入選している。

 都内で制作に没頭

 常磐興産社長やいわき観光まちづくりビューロー会長を退いてからは、いわき市を離れて都内で暮らす。自由な時間が増え、1日数時間は自宅で制作活動に没頭する。温泉地など観光を楽しんではアウトプットとして作品を生み出すという。井上さんにとっての銅版画とは―。「生きているのと一緒のこと。絵日記のような感覚かな」。顔をほころばせ、そう声を弾ませた。(折笠善昭)

    ◇

 個展は11月25~30日、東京都中央区のギャラリー檜B・Cで開く。いわき市やハワイ、サモアの風景画に加え、フラガールをモチーフにした作品など40点以上を披露するという。

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