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絵本作家が駅舎にペイント JR会津塩沢駅、只見中生徒から依頼

10/07 09:35

無人駅舎に絵を描く吉田さん
列車に手を振る様子が描かれた絵。只見線全線再開通2年を祝っている=只見町・JR会津塩沢駅

 新潟・福島豪雨で被災したJR只見線が全線再開通から1日で2年を迎えたことを記念し、京都府の絵本作家吉田瑠美さんが只見町のJR会津塩沢駅の駅舎壁面に絵を描いた。吉田さんは「只見には素晴らしい光景がある。まちの人に喜んでもらえれば」と思いを語る。

 只見町が舞台の一つになった映画「青春18×2 君へと続く道」が5月に公開された。吉田さんはヒロインのアミが作中で描く絵を担当した。映画を見た只見町の角田杏さん(只見中2年)が、吉田さんにメールを送った。「只見の無人駅に絵を描いてください」。地域を盛り上げてほしいと望む中学生からの「ラブコール」をうれしく思った吉田さんは「いつか必ず行きます」と応じた。すると、その日のうちに返信があった。「いつにしますか?」

 「それから、とんとん拍子で駅舎に絵を描くことになった。何かを実現しようと思ったら、まずは日程を決めてしまうと早いですね」と笑って振り返る吉田さん。9月20日から1週間で仕上げることになった。テーマは、アミが見た只見の風景で、家族が只見線の列車に手を振る構図にした。

 会津塩沢駅は無人駅で、周りは田んぼのほか、人家が点在している。作業中は時折、雨に見舞われたが、孤独ではなかった。地域住民がおにぎりなどの食べ物や、パラソルや下敷き板など作業に必要な道具を差し入れてくれた。住民が只見線の列車に向けて熱心に手を振る様子にも吉田さんは心を打たれたという。「只見線が暮らしの一部分になっている。大切にしていることが伝わってきた」

 絵は完成した。田園風景の駅舎を彩っている。「また絵を描きに只見を訪れたい」と再会を期している。(富山和明)

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