戦闘への人的な加担が疑われる状況だ。侵略行為の激化に加え、東アジアの緊張が高まることも懸念される。決して容認できない。
北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を支援するため、特殊部隊員をロシアに派遣した。韓国は北朝鮮が「侵攻に参戦した」との見解を明らかにした。米国やウクライナも同様の認識を示している。ウクライナは、国境と接するロシア西部のクルスク州などで北朝鮮の兵が確認されたとしている。
北朝鮮は派兵について明言を避けている。何ら意図を説明することなしに、危険を伴う他国の戦闘地域に自国の兵を派遣する行為は常軌を逸している。
ロシアは戦闘長期化で死傷者が増え、兵の不足が深刻化している。このようなあいまいな形で、他国を戦闘に巻き込むようなロシアの姿勢も厳しい非難に値する。
ロシアと北朝鮮は6月、どちらか一方が戦争状態になった場合の相互支援などを盛り込んだ包括的戦略パートナーシップ条約に署名し、協力関係を深めている。
今回の派兵で関係をより深めることで、核やミサイルの軍事技術の支援などの見返りを得ることが北朝鮮側の狙いにありそうだ。
北朝鮮は昨年末、南北共存は不可能だとして平和統一を放棄する方針を表明し、今月に入ってからは南北間を結ぶ道路などを爆破するなど、韓国への敵対姿勢を鮮明にしている。ロシアとの関係強化も、韓国への強硬な態度と軌を一にしているとみるのが自然だ。
北朝鮮がロシアを後ろ盾とすることで懸念されるのは、日本や韓国に対する挑発的な行動の先鋭化だ。兵が実戦を経験し、戦場での兵器使用のノウハウが蓄積されれば、北朝鮮の脅威はより大きくなると考えるべきだろう。
日本は先進7カ国(G7)や日米韓の枠組みで、ロシアと北朝鮮の動きを批判し、軍事協力関係の解消を求めるなどしている。国連もきょう、安全保障理事会の緊急会合を開き、この問題を協議することにしている。多くの国々が今回の行動を憂慮していることを伝えていくのが大切だ。
中国の北朝鮮に対する態度も注視する必要がある。中国外務省は米国が派兵を確認したことを明らかにしたのを受け、その動きを把握していないとあえて言及した。中国が派兵を歓迎していないことを示唆した形だ。
北朝鮮にとって中国はロシアと同様に関係が深い国であり、その影響力は大きい。中国も含める形で北朝鮮に対し自重を求める方策も模索すべきだ。