東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌を資材化する国の方針を巡り、環境省は29日、再生利用の呼称を「復興再生利用」に改める方向で検討すると明らかにした。使う土壌や管理方法などは従来の説明と変わらない。固有の名称を付けることで一般に流通する資材と区別し、管理責任の存在を明らかにする。
東京都内で開かれた国の放射線審議会で、環境省が改称方針を説明した。定義は「日本の復興に資することを目的とし、実施や管理の責任体制が明確であり(中略)適切な管理の下、盛り土などの用途のために再生資材化した除去土壌を利用すること」と明示した。
環境省の有識者検討会ではこれまで、一般的な廃棄物の再利用と混同し、管理されなくなったり一般に流通したりするとの誤解を生む懸念が指摘されていた。実際は飛散、流出の防止や空間線量率の定期測定など、長期間にわたって管理下に置かれることが同省の基準案に明記されている。
同省が県外3カ所で計画した再生利用実証事業は地元の反発に遭い、停滞している。国の担当者は取材に「復興の一環の取り組みだと明確に示すことで、これまで以上に再生利用の意義や背景は説明しやすくなる」と述べた。近く正式に改称を決定する。
土壌は県内外に1333万立方メートルあり、中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)には県内で発生した1300万立方メートルが保管されている。政府は県外最終処分に回す量を減らすため、2025年度以降、全国で再生利用を本格化させる方針。
基準案諮問受ける
放射線審議会は再生利用と最終処分に関し、環境省から基準案の諮問を受けた。再生利用する土壌の放射性セシウム濃度が「1キロ当たり8千ベクレル以下」で適切かどうかなどを検討し、次回も審議を継続する。