北海道大と産業技術総合研究所発のスタートアップ(新興)企業「大熊ダイヤモンドデバイス」(札幌市)と、大熊町は31日、町内の産業団地「大熊中央産業拠点」への工場立地協定を結んだ。同社は高温や放射線への耐久力があるダイヤモンド半導体を手がけている。工場が完成すれば世界初の量産工場で、東京電力福島第1原発の廃炉作業などへの活用が期待される。2026年の操業開始予定。
ダイヤモンド半導体は300度以上の高温や高放射線量下でも作動可能な特性があり、主流のシリコン素材の半導体よりも電力効率などで高い性能を持つ。第1原発の溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなどでの活用や、宇宙空間への応用など多彩な環境下での活用が期待される。
同社はダイヤモンド半導体の特性を生かし、第1原発の廃炉実現につなげようと22年3月に設立。起業支援拠点「大熊インキュベーションセンター」に入居し、技術の確立に取り組んできた。工場の建設地は特定復興再生拠点区域(復興拠点)にあり、立地企業は3社目。敷地面積は約6千平方メートルで来年1月の着工予定。操業当初の雇用は数十人を見込み、将来は100人規模への拡大も視野に入れる。
協定調印式が町役場で行われ、吉田淳町長と星川尚久社長が協定書を取り交わした。星川社長は「ダイヤモンド半導体の社会実装を実現させる。日本発の次世代半導体産業を創造し、リードしていく」と述べた。