僕たちの活動は、介助ボランティアの存在なくしては成り立たない。
障がい者の旅行を考える会のツアーには、看護師や介護士の資格を持つ人にボランティアで参加してもらっている。年1回ほど募集すると「旅行が好き」「自分の経験を生かしたい」という人が応募してくれる。
ボランティアの旅費はツアーに参加する障害者が負担する。でも、それ以上の労力を彼らは旅行中に注いでくれる。
起床と就寝の介助があるので誰よりも早く起きて、寝るのは最後。飛行機を使う場合は参加者がトイレに行くのを手伝ったり、床ずれやエコノミークラス症候群にならないよう参加者の体を3時間に1回動かしたりする。
ほかに目配せしてもらうことも多く、気が休まらない体力勝負の活動だ。ボランティア一人一人に感謝の気持ちは尽きない。
その中でも考える会の活動を語る上で欠かせない人たちがいる。
まず紹介したいのが、長くボランティアを務めてくれている南相馬市の渋谷のり子さん(62)と、会津若松市の薄賢次郎さん(70)。
元看護師の渋谷さんは「東日本大震災でいろいろな方から受けた恩を何かしらの形で返したい」とボランティアに応募してくれた。介護施設を経営する薄さんは2003(平成15)年から活動に参加している。福祉用具の扱いに詳しく、旅先で何度も助けられた。
そして僕と一緒に考える会を設立した北原君子さん(故人)。1998年に別団体の障害者向け旅行で知り合い、家族ぐるみの付き合いをした。僕を「福島の兄(あん)ちゃん」と呼んでくれた母親のような存在だ。
僕が考える会を設立したいと伝えた時には「私が介助をやるから、兄ちゃんは企画とか募集をやりな」と背中を押してくれた。
北原さんは2012年5月にがんで亡くなる間際、病床を訪ねた僕の手を握り、涙ながらに言ってくれた。「これからもみんなのために頑張りなよ」。その言葉は今でも僕の心の支えになっている。